トラクター持ってて時給100円はパロディ

2025年3月30日、東京都内港区を中心に北海道札幌市、富山県富山市、岐阜県各務原市、静岡県浜松市、滋賀県湖東市と近江八幡市、京都府京丹後市、奈良県奈良市、山口県山口市、福岡県福岡市と大牟田市、熊本県熊本市、大分県九重市、沖縄県那覇市の全国計15か所で農民によるトラクターデモが行われたという報道がありました。中には「令和の百姓一揆」と表現している報道もあります。テレビでトラクターに乗った農民が「私の時給は100円。これでは生きていけない」と言っていましたが、あまりにもデフォルメ(誇張)された表現でありがっかりしました。と言うのは、時給100円ということは1日1,000円(10時間)であり、月収約3万円、年収約36万円です。トラクターは新車で最低200万円、中古で100万円はしますし、ガソリン代や修理費などの維持費が相当かかりますから、年収36万円では持てません。トラクターを持つには最低年収2~300万円は必要だと思われます。あるいはトラクターなどの農業コストを除いた利益が年間約36万円という意味かも知れませんが、これでも世帯で生活するのは難しいと思われます。だから冗談で言っているとしか思えませんでした。

農家の収入が低いのは事実ですが、日本の農家は兼業農家が多く、農業は副業になっている世帯が多くなっています。収入は別途あり農業は先祖代々の農地を守るためだけという世帯です。そのため農業収入は全て農機具代に使い、生活費としては考えていない農家が多くなっています。米を作っている農家で言えば1~2丁(ha)の作付面積なのに、トラクター、田植え機、コンバイン、乾燥機と揃えている農家が多くあります。この場合収入は160~320万円(1反当たり60kg袋10俵の収量として60kg1万6千円で計算)であり、これらの購入代金の返済や燃料代、修繕費などを差し引いたら半分残ればよい方だと思われます。これでは子供を大学にやるのも無理です。

しかし上記計算を見れば米農家でも豊かになれることが分かります。例えば10ha作れば約1,600万円の収入(売上)となり、農機具などの費用を引いても農家の手取りは1,000万円を超えてくると思われます。今の装備なら10haの田植え、収穫は10日もあれば十分です。20haあれば医者並みの収入になります。だから米農家も一定の規模さえあれば十分に豊かな生活ができる職業です。これが低収入になっているのは米農家の作付面積が少な過ぎるのです。これが多くならないのは農家が先祖代々の農地を手放さないからのようです。それに田の区画面積が狭いため機械があっても効率が悪く、広げるには権利関係の調整が大変で一筋縄ではいかないようです。米農家1軒当たりの作付面積を10haとすると米農家の数は今の5分の1で良いことになります。そうなると今の農村の人口はまだまだ過剰であることが分かります。このように農家の経営規模を拡大しない限り農家の低収入は解決されませんから、農民がデモで要求するとすれば規模の拡大です。農産物の自給拡大も規模の拡大でのみ可能です。