トランプには日米安全保障条約を破棄して欲しい
米国のトランプ大統領(トランプ)が世界の多くの国に高関税を課したことから、世界が混乱に陥っています。株価が大暴落したことが威力の凄まじさを表しています。145%の関税を課された中国は125%の関税を課し返し、大国のメンツを保っています。その他の多くの国はトランプと交渉して高関税を撤回してもらう作戦です。その先頭に日本が指名され、先週赤沢担当大臣が米国に就きました。当初米国側の担当であるベッセント財務長官らと交渉する予定だったのですが、トランプが飛び入り参加したようです。トランプが述べたことは、「米国は日本に対して約17兆円の貿易赤字であり解消したい」「日米安全保障条約は片務的であり不公平だ」に要約されるようです。具体的な解決策は事務局で詰めるようですが、貿易赤字の解消は解決策が見当たりません。日本の輸出は自動車が中心であり、これを減らせば大量の失業者が出ます。輸入を増やすにしてもコメや大豆などの農産物が中心であり、せいぜい数千億円にしかなりません。従って貿易赤字解消についてはちょっと着地点が見えません。
そうなるとトランプが主張するもう1つのテーマである安全保障で劇的な合意を行うしかないと思われます。日米安全保障条約はトランプが言う通り米国は日本を守る義務があるが日本はないという片務契約であり、明らかに不公平です。新聞ではトランプは米軍駐留費負担増加を求めているように書いていますが、そうではなく一緒に戦う内容(双務的契約)への変更を求めていると考えるべきだと思われます。そもそも日米安全保障条約は戦後日本が武装を解除された状態にあるときに締結されたもので、双務的契約は不可能でした。またこの条約には米国が実質的に占領を続けること、および日本の再武装を防止する狙いがありました。これはこれまでの米国首脳および安全保障スタッフに共有された認識であり、米国から日米相互防衛条約への変更を要求しなかった理由です。これをトランプが真正面から要求したということは、日本を対等なパートナーと扱っている証拠であり、歓迎すべきことです。それにウクライナ戦争を見ればロシアや中国に対して米国が前面に出て戦うことはなくせいぜい後方支援をするくらいだということは明らかです。従って日本も遅ればせながら軍備を増強し、単独でもある程度戦える体制を整えています。トランプの要求は日本の現在の流れに沿うものであり、米国との防衛関係を実効性のあるものにするには、トランプの要求に乗ることが有益です。幸い石破首相の唯一の構想は米国に自衛隊の基地を置くこと(日米安全保障条約の片務性を改めること)であり、これは日米相互防衛条約を締結すれば実現します。日米安全保障条約を廃止し、日米相互防衛条約を締結することは戦後米国による日本占領体制の終了を意味し、日本にとって歴史的転換点となります。これを実現するためトランプには日米安全保障条約を破棄して欲しいと思います。そうなれば日本人も真剣に防衛問題を考えるようになります。少なくとも「思いやり予算」というようなふざけた言葉(文学用語)は使わないようになります。