日銀は上場廃止と同時に清算すればよい

東京証券取引所(東証)が上場維持基準に到達していない企業に適用してきた猶予期間が今年3月31日(3月期決算の企業)に終了し、2026年3月末までに改善しなければ、同年10月1日に上場廃止になります。これにより真っ先に上場廃止になるのが日本銀行(日銀)です。そもそも日銀が上場しているのがおかしく、普通に上場規則が適用されれば先ず上場が承認されることはありません。上場できた(1983年)のは東証を所管していた大蔵省の圧力があったためと考えられます。当時の東証は何でもありのいかさま市場でしたから驚くには当たらないかも知れません。これがニューヨークやロンドンなどと肩を並べるため市場改革に乗り出したことから、日銀が真っ先にはじき出されることになりました。2022年4月から実施された市場区分改革(プライム、スタンダード、グロースに分ける)で日銀はどこにも属さないことになり、1社だけ市場区分無しで異常な上場を続けていますが、今回は間違いなく上場廃止になります。

日銀にとっては大きな出来事になりますが、この際現在の日銀を清算し新しい日銀を設立して資産と業務を移管することが考えられます。日銀の2025年4月10日付営業毎旬報告によると、日銀の総資産は約729兆円で、そのうち国債が約575兆円と約79%を占めます。負債を見ると当座預金が528億円と約72%を占めますから、日銀は銀行などが預けた当座預金で国債を購入していることになります。バランスシート上国債は短気流動資産として計上されていますが、実際は長期間保有することが予定されている長期固定資産です。これをいつでも返済を求められる当座預金で購入することは財務管理上ありえません(国債は売れないので多額の当座預金の返還を求められると返還できなくなる=倒産)。ただし実体的に見ると当座預金と言いながら額が増えることはあっても減ることはめったに無いことから、実体は長期性預金となっており、問題となることはありません。だから勘定科目の流動性分析で見れば危険なバランスシートですが、実体はそうでもないことになります。

ただし日本の国債残高が約1,300兆円となりGDPの2倍を超えていることを考えると、ここで国債を減らせるものならば減らしたいところです。そこで上場廃止を機会に現在の日銀を清算し、新しい日銀を設立して資産を移し替えることが考えられます。そしてその際に清算する日銀のバランスシート借方に国債500兆円を、貸方に日銀券500兆円を残します。日銀券を発行して同額の当座預金を一旦金融機関に返還します。最後に国債と日銀券を相殺すれば旧日銀のバランスシートから国債残高500兆円が綺麗に消えます(日銀券500兆円も)。なぜこういうことが出来るかというと、日銀券は擬制負債(債権者がいない架空の負債。無くなっても損する人がいない負債。湧き水みたいなもの)だからです。この結果新しい日銀のバランスシートには約75兆円の国債が残ることになります(国債残高は約1,300兆円から約800兆円になる)。金融機関は当座預金が500兆円返還されることからこの分利子収入が減りますが、当座預金は無利子が当たり前であり、正常化されたことになります。それにこのまま日銀当座預金にしておけば国債の返還不能確定に伴い損失処理する必要性が生じるので、これも回避できます。これを読んでお気付きの方も多いと思いますが、返済不能な日本の国債は将来このようにして処分することが予定されています(国民が返すわけではない)。