日産7,500億円の赤字で8人の社外取締役留任はない!
4月24日、日産は2025年3月期の連結純損益予想を800億円の赤字から7,000億~7,500億円の赤字に修正しました。販売状況に比べて過大となっていた国内外の工場の資産価値を5,000億円以上落とす(減損処理)ことにしたことや約9,000人のリストラ費用などが要因と言うことです。
4月26日には中国湖北省の武漢工場での車両生産から撤退する方針を固めたと報道されました。武漢工場は2022年完成した年30万台の生産能力を持つ主力拠点ですが、中国メーカーの台頭による販売不振で稼働率が1割未満に低迷しており、回復は不可能と判断したようです。日産の中国での販売台数は最盛期の約160万台から約70万台に落ちていますが、武漢工場意外にも4工場あります。今回の5,000億円を超える減損処理には武漢工場が含まれていると思われますが、他の4工場は含まれていないと思われ、今後も減損処理が続くことが予想されます。中国ではBYDなどの中国自動車メーカーの電気自動車やHV、PHVが市場を席捲しており、外国車メーカーは販売台数を減らしています。日本車メーカーもトヨタがかろうじて前年並みの販売台数を維持していますが、他社は軒並み20~30%減らしています。トヨタは現地法人トップを中国人にする、中国製部品を使いBYDよりも安い電気自動車を生産するなど反撃体制を整えていますが、他社は相変わらずです。日産も現地トップは前日産本社のCFOであり、変わりようがありません。日産は既に中国では必要がない自動車メーカーになっており、今後とも販売台数は減ると予想されます。
こうなると今なお100万台を超える販売台数を誇る米国市場が日産の命綱となります。日産の発表によると、2024年度の販売台数は前の期比4.3%減の329万8,140台で、米国販売は3月の販売増(9.9%増の約11万台)があって年度全体でプラスを確保したとなっていますので約126万台と予想されます。日産は米国内のブランドイメージが低く安い車として売られているようです。そのため低所得層には一定の購買者がいることが伺えます。この購買層を押さえて人気車を販売すれば生き残れる可能性はあると思われます。
報道によるとエスピノーザ社長が「私たちは困難な状況に直面しているが、当社には潤沢な財務基盤と強力な商品ラインナップがある。強い意志を持って再建に取り組む」とコメントしたとなっていますが、「潤沢な財務基盤」と「強力な商品ラインナップ」には疑問符が付きます。財務的には2024年度末時点で約1兆5,000億円の手元資金があるようですが、1年以内に返済が必要な長期借入金が約1.7兆円、同社債が約3,363億円ある(2025年3月期第三四半期決算)ことから、借り換えが上手く行かないと資金ショートしてしまいます。この手当として現在15%保有しているルノー株式を5%まで売却できることにし、ルノーの電気自動車新会社に約1,000億円出資する約束を解消しました。また三菱自動車株式を約29%持っており、これを売却すれば1,000~2,000億円の資金が確保できます。従って今期中に資金ショートなることはないと考えられます。今期の損益については販売台数次第ですが、中国では60万台程度まで落ちることが予想されますので、米国とその他の市場でこれをカバーできるかどうかが黒字のポイントとなります。新経営陣になって合理的な経営施策を打ち出しており、いい船出になっているように思われます。
ところで今回2025年3月期決算が約800億円の赤字から7,000~7,500億円の赤字に変更されたことは、取締役会が全く機能していなかったことを意味します。日産は12人の取締役中8名が社外取締役(日産指名の2名とルノー指名の2名を除く)であり、含み損を放置してきた社外取締役の責任が問われます。監査委員会委員長はみずほ銀行出身の永井素夫氏であり、監査はプロのはずです。これがここまで放置されたことは意図的と言われてもおかしくありません。8人の社外取締役は、内田社長を指名したこと、報酬を業績と無関係に高額に設定したこと、含み損を放置したことの責任を考えれば自ら辞任するのが相当ですが、全員留任と報道されています。日産の株主は次の株主総会で不信任にすることで8人の責任を問う必要があります。