国防を米国に依存している限り関税交渉も勝ち目無し
日本が米国のトランプ大統領(トランプ)が発令した自動車への25%関税の撤廃を目指す2回目の関税交渉が5月1日(米国時間)に開催され、その場で米国側は自動車への25%の関税は交渉対象ではないと述べたという報道です。日本側は自動車への25%関税の適用除外を求め、大豆やトウモロコシの輸入拡大や自動車の無関税輸入枠の拡大、安全認証基準の特例扱いなどを提案したとなっています。
これを見ると交渉が全くかみ合っていないことが分かります。自動車に対する25%の関税は多くの国に適用されており、これを日本だけ免除するなど不可能ですから、言うだけ無駄だと思われます。また大豆やトウモロコシの輸入拡大では数千億円にしかならず、米国が問題にする日本のとの貿易赤字約7兆円(うち自動車が約6兆円)の穴埋めには全くなりません。米国製自動車の無関税輸入枠の拡大、安全認証基準の特例扱いをしても米国製の自動車が日本で売れる見込みはないことから、米国にとって全くメリットがないのは明らかです。トランプはビジネスマンであり、数字に表れるメリットがなければ受け入れません。日本側の提案はトランプにとって箸にも棒にもかからないレベルと思われます。たぶん自動車関税25%については、米国現地生産を増やすという約束しか撤廃の可能性はないと思われます。現在日本メーカーは円安で25%関税を負担しても(米国での販売価格を上げなくても)利益は出ますので、トランプ政権が終わるまで我慢する姿勢のように思われます。特にトヨタなんか全く騒いでいませんし、このような経験(現地生産を迫られた)は過去にもあります。
だから米国から具体的に要求がない限りこちらから譲歩案は出さない方が良いと思われます。譲歩案は日本側が不公平と認めていることを意味し、今後合意書に確実に盛り込まれることになります。
今回の交渉後石破首相は、自動車に対する米国の25%関税に関し「絶対のめない」と述べたようですが、自動車の25%の関税は交渉で設定されるのではなく米国が一方的に設定したものですから、「飲める、飲めない」の問題ではありません。これを見ても石破首相は結果を出してきた人ではないことが分かります。結果を出してきた人は、何が交渉(合意)の対象であるか直ぐ分かります。石破首相は首相になるまでお気楽に政治資金批判を繰り広げてきた人であり、多くの人と交渉して合意をまとめた経験がありません(大臣としても石破氏がやったことは何もない)。従って結果を出すための思考が全く身に付いていません。たぶんトランプは石破首相と会ってこのことが直ぐわかったはずです。だからトランプは石破首相との間で画期的な合意が成立するのは思っていないと思われます。もしトランプが日本との交渉で妥協するとすれば、日本側が片務的な日米安全保障条約を双務的な日米相互防衛条約に変更することを提案した場合だけだと思われます。トランプは中国に製造業ばかりでなく軍事力で抜かれた(あるいは抜かれる)と思っており、東アジアでは日韓を味方にしないと太刀打ちできないことが分かっています。その場合日本には米軍に守られるばかりでなく、米軍と一体となって中国に対抗する決意が求められます。日本がそこを明確にすれば貿易赤字は多少我慢することになります(米国は中国に対して軍事力で優位に立つため来年の予算で軍事費を16兆円増やすと報道されている)。日本は国防を米国に依存している限り、あらゆる米国との交渉に勝ち目はありません(交渉は対等な関係が前提)。