国民収奪の携帯電話は国有化も検討すべき

ドコモとauが携帯料金の値上げを発表しました。2025年3月期の業績は、

ドコモ; 売上高6兆2,131億円、営業利益1兆205億円、営業利益率16.4%、

au ;売上高5兆7,700億円、営業利益1兆1,000億円、営業利益率19.0%

となっています。これを見ると営業利益率の高さが目を引きます。日本一利益を出しているトヨタの営業利益率が10.0%ですから、これより6~9%以上高くなっています。トヨタの場合、約7万人の雇用(本体)を抱え、グローバルな競争下にありますが、ドコモとauの雇用は共に約9,000人であり、電波の独占的利用権が利益の源泉です。

電波は本来国民の共有財産ですから、国民が安く便利に使えるように利用される必要があります。そのため電話サービスは国営で始まっており、日本では長い間国営の日本電信電話公社が独占していました。これをもっと安く便利なサービスを提供するために1985年に日本電信電話公社を民営化しNTTが生まれました。同時に競争させるため民間企業の参入を許可しました。当初は固定電話での競争だったためNTTの牙城は強固で新規参入企業はシェアを伸ばせませんでしたが、2000年以降携帯電話の時代にになって現在のauやソフトバンクがシェアを伸ばしました。そしてある程度シェアが固定化すると携帯電話3社が結託して同じようなサービスと料金体制を採用し、利益の極大化に走りました。その結果営業利益率は20~25%に達しました。バブル崩壊後物価は低迷し、所得が上がらない中で携帯電話3社が国民から収奪している状況は誰が見ても異常であったところ2018年当時の菅官房長官が「携帯料金は4割下げられる」と発言し、携帯電話3社に値下げを迫りました。これに呼応して各社が安いプランを発表しましたが、利益を受ける人は少ないようになっていました。このため2018年には楽天に携帯電話用電波が割り当てられ、楽天モバイルが2019年10月からサービスを開始しました。楽天モバイが低価格料金を設定したため他の3社も安い料金のサービスを出し始め、ここから携帯電話料金は目に見える形で下がり始めます。しかし楽天モバイルは通信網が貧弱で通信品質が悪いという問題を抱えていたため、他の3社のシェアを奪うところまでは行きませんでした。そのうち楽天が巨大な投資に耐えられなくなり、auの通信網を借りて命脈を継いでいます。

この結果携帯電話4社のシェアは固定し、実質的に菅官房長官が問題視した以前の状態に戻ってしまいました。そのためそろそろ先発3社が料金値上げに動くのではと予想されていました。これが今回のドコモとauの値上げの背景です。次は近々ソフトバンクが値上げを発表すると思われます。問題は楽天モバイルですが、おそらく追随するはずです。というのは、楽天モバイルはauから通信回線を借用しており、auがこの貸付料を値上げすれば携帯料金を値上げせざるを得ないからです。多分auはこの貸付料をドカーンと値上げすると思われます。楽天モバイルはやっと最近通信品質が良くなったと言われ始めたところであり、auからの通信回線借入を止めるわけには行きません。auは楽天モバイルの料金体系を左右する肝を押さえているのです。これを考えるとauの高橋前社長は優秀な戦略家だったことが分かります。そのため楽天モバイルも料金を上げてくるのは間違いありませんが、まだまだ契約者数を増やす必要があることから、他の3社と比べると安い料金体系に留まると予想されます。

電波は国民の財産であることは間違いなく、それを使う電話サービスは公共サービスであり、電気や水道、鉄道などの料金と同じくコストを基に計算して設定される必要がありまます。寡占を利用して国民から搾取することを許してはいけません。携帯電話会社の国有化も視野に検討すべきです。