NISA拡充は政府のインフレ宣言

日本証券業協会によると、2014年に設けられた少額投資非課税制度(NISA)を使った投資の額は4月末で累計56兆5,000億円となり、政府計画(2027年度末)を3年早く達成したということです
これは岸田政権が3年前に設定した資産所得倍増プランに基づき去年から投資の上限額が大幅に引き上げられたことや非課税で保有できる期間が無期限となったことが効いており、去年1年間の投資額がおよそ20兆円と急増しています。
一方NISAの口座数は去年12月の時点でおよそ2,500万口座と、2027年までの政府目標3,400万口座の約7割に留まっています。ということは、NISA口座を開設した人が預金をNISAに移す動きがあったことが伺えます(預金利子から配当へ)。

岸田前首相が会長を務める自民党の資産運用立国議員連盟は4月23日、高齢者用や18未満の若者用などNISAの拡充を求める提言を石破首相に提出しました。

ここ2、3年の株価高騰からNISAで資産を増やした人が多いことが背景にあると思われます。NISAは配当やキャピタルゲインが非課税となりますから、通常財務省や自民党の財政健全派議員が反対しますが、今回は聞こえてきません。それはこの動きは岸田前首相という大物議員が中心となっていることもあるでしょうが、それ以上に株式関連の税収が増えていることが大きいように思われます。要するに株式市場参加者を増やせば、NISAの非課税による税収減を上回る税収増加があると分かったからです。それに2024年度の名目GDPは2.9%増、実額は609兆2,887億円と初めて600兆円を突破しました。これは物価高騰が主因ですが、この背景には株式市場の活況があり、それにはNISAが一役買っています。日本の国債残高は1,300億円を超え、GDP比2倍を超えて世界最悪ですが、正常と言われる1.5倍以下を実現するにはインフレを起こしてGDPを増やすしかありません。国債残高が1,300兆円以上ということは、民間に1,300兆円を超える資金がばら撒かれたことを意味し、インフレの燃料は十分溜まっています。今の物価上昇は既にインフレに火が付いた状態なのかも知れません。政府と財務省は、インフレを利用して財政問題を解決する決心をしたと考えられます。そうだとすれば今後物価の上昇は止まらないし、今後5年程度で物価が倍増する事態が予想されます。長期的に使用しない資金は預金より株式(ただし絶対に潰れない会社の株式)で持つ方がよいのではないでしょうか。