日産は2027年度にもホンダと統合
5月13日日産は2027年度までに約20,000人の人員と7工場を削減するリストラ計画を発表しました。販売台数が年間約335万台のところ生産能力は約500万台となっており、現状生産能力が約3割過剰となっています。そのためこのリストラは販売台数に応じた生産能力にすると言うことであり、当然の施策と言えます。今回はこれまで避けてきた日本人社員や日本の工場も対象となっており、工場がある地域では雇用不安が広がっています。5月17日の読売新聞で閉鎖される日本の工場は追浜工場と湘南工場(日産車体)になると報道されました。追浜工場は1961年に操業を開始した日産のマザー工場であり、敷地面積約170万㎡、従業員数約3,900人、生産能力約24万台の巨大工場です。日産にはこの他栃木工場(生産能力約24万台)、福岡苅田工場(同約50万台)と言う追浜工場を上回る規模の工場があるのですが、追浜工場は一番設備が古く首都圏にあり処分が容易ということで選ばれたようです。日産の昨年の国内販売台数は約46万台であり、栃木工場と苅田工場があれば対応できます。今後エンジンや重要部品を生産しているいわき工場および横浜工場が追加で閉鎖される可能性があります。追浜工場と湘南工場の閉鎖で約5,000人の従業員が削減されることとなりますが、これに加え本社などのスタッフ2,000~3,000人の削減が予想されます。
海外ではメキシコ2工場、南アフリカ・アルゼンチン・インドの各1工場、計5工場の閉鎖が計画されているようですが、米国工場は計画にないようです。米国の販売台数は2017年の約200万台をピークに減り始め、昨年は約130万台となっています。日産は米国に3つの工場(スマーナ、デカード、キャリントン)を持っていますが、生産能力が過剰となっており、工場閉鎖も検討されてきました。今年2月のリストラ計画においては、閉鎖はせずラインの稼働調整を行うとされていました。その後就任が決まったエスピノーザ社長は工場閉鎖も考えたと思われますが、トランプ大統領が日本車に24%の関税をかけると表明したことから事情が変わりました。どう変わったかと言うと過剰生産能力の米国3工場がビジネスチャンスとなったのです。というのは、日本車メーカーの殆どが米国生産を増やす必要性に迫られているからです。しかし工場を作っていては時間がかかるし、トランプ大統領の任期が終了すれば高関税が撤廃されるかもしれないことから、身動きできない状況です。そこで考えられるのが日産米国工場の余剰生産能力を活用することです。日産米国工場に生産委託をすればよいのです。日本車メーカーの殆どが米国内に工場を持っていることから、部品は米国内の増産と輸入で対応できます。既に三菱自動車がこれを計画しているようですが、マツダやスバル、ホンダも必要となっています。特にホンダは一部で日産と協業していること、およびこれまでの経緯からこれが実現する可能性が高いと思われます。
こう考えると日産のエスピノーザ社長が目指している方向が見えてきます。ホンダとの経営統合です。昨年11月に始まった日産とホンダの経営統合交渉は、ホンダが日産の子会社化を提案したことから破談となりましたが、ホンダが子会社化で狙ったことは今日産がやろうとしている日産の合理化です。たぶん今日産がやっている合理化は、ホンダが日産を子会社化した場合の規模とスピードを超えていると思われます。従ってホンダとしては日産と経営統合する3つの条件のうち1つがクリアされます。2つめの条件は、ルノーの持ち株割合(約36%)を下げることです。この持ち株割合ではルノーに重要議案拒否権がありますので、日産は事実上ルノーの承認なしに何も決められないことになります。そこでルノーの持ち株比率を下げる(少なくとも34%未満に)必要があります。これについてもルノーと日産は双方の持ち株割合を5%まで引き下げることに合意したと報道されていますので、解決は近いと思われます。3つ目の条件は日産が黒字体質となることです。日産の前期の純損益は約6,700億円の赤字ですが、営業利益は約670億円の黒字であり、これだけの大合理化を行えば黒字体質化は可能です。従ってホンダが提示した日産との統合条件は全てクリアされることになります。日産は今回の合理化によって生産・販売能力250万台で黒字化経営可能な体質を目指していますが、この規模では単独での生き残りは不可能です。一方はホンダの2025年3月期決算は営業利益約1兆21,34億円、当期利益約9,030億円と立派な数字となっていますが、今期についてはトランプ関税の影響で純利益は約70%減の約2,500億円を見込んでいます。ホンダの利益の大部分は二輪車部門(前期営業利益約6,634億円。自動車部門は約2,438億円。日産自動車部門は2,158億円の赤字。共に販売金融利益は別枠。)が稼いでおり、今期はトランプ関税の影響で自動車部門の営業利益は赤字転落も考えられます。従ってホンダの自動車部門も単独での生き残りは困難です。このため2027年度にも日産とホンダは経営統合すると予想されます。