輸入米に慣れれば国産米は必要なくなる
米価格の高騰が止まりません。5kg4,200円台と昨年の2倍以上となっています。1年で日常生活商品がこんなに上がった経験はありませんし、それも主食です。3人家族だと月10,000円以上の支出増加となります。それ以上に物価の優等生だった米が2倍になるのなら他の商品も2倍になって良いとなって物価全体が2倍になることが危惧されます。
米の価格がこれだけ高くなると生産者側からさすがに上がり過ぎという声が出てくると思っていたら、逆です。5月13日全国農業協同組合中央会(JA全中)の山野徹会長は定例記者会見で、現在のコメ価格について「決して高いとは思っていない」と述べました。肥料、農薬、農業資材、農機具代などの生産コストが上昇しているのに長い間米の価格は据え置かれてきたことを理由にしています。そしてこれに理解を示す意見もみられますが、いきなり2倍はないと思われます。去年までの米の価格では農家はやっていけないと言いますが、日本の米農家は10ha未満の作付け面性が約95%、うち5ha未満が約半分を占め、2ha未満が約30%と最大の割合を占めます。2ha未満でもトラクター、田植え機、コンバイン、乾燥機を揃えているところが多く、これでは赤字が当然です。こういう農家は収入源は他にあり農業は先祖代々の農地を守るためにやっているだけです。日本の産業を見ると中小企業が淘汰され大企業による寡占が増えていますが、農業ではこれが遅々として進んでいません。ある資料によると作付面積が15haを超えると米農家の所得は500万円を超える(60kgの米買入価格が約14,000円のとき)となっていますので、大規模化すれば決して儲からない事業ではないことがわかります。15haなら今の機械装備なら田植え、収穫とも10日もあれば済むと思われます。農作業は自動車工場で働くより楽であり、決して労働対価は悪くありません。北海道の1農家当たりの農地は約30haで農業所得は約500万円となっており、同じ農地面積なら米農家の所得が倍良いことになります。要するに米の価格は今くらいないと農家はやっていけないというのは、現在の小規模経営を前提としたものです。政府や農業団体は食糧安全保障の観点から米農家を守るべきと言いますが、零細米農家では後継者がおらず米の作付け面作はどんどん減少しますから、食糧安全保障にはなりません。
今年の米の買取価格は60kg当たり23,000円程度(昨年は16,000円程度)程度になっているようなので、今年の新米の5kg当たりの小売価格は5,000円を超えてくると予想されます。そうなると国民の半数は買えなくなり、国産米は富裕層用になって行くと思われます。そのため庶民用は5kg4,000円以下で買える輸入米(カリフォルニア米で3,500円程度。1kg341円の関税が掛かるので5kg1,705円の関税が掛かっている)にシフトしていきます。カリフォルニア米は国産米と殆ど変わらない味覚であり、慣れれば全く問題ありません。ベトナム米やタイ米はもっと安く買えると言われており、輸入米のシェアはあっという間に3~4割に達します。その結果国内農家は富裕層向けの米を作る役割となりますが、本当の富裕層は2~3割と少なく、かつコメの消費量が少ないことから、販売量が減り経営が成り立たなくなります。私もカルフォルニア米を買って食べましたが、炊き上がりのふっくら感はないですが、味は国産米と変わらず美味しかったです。多分カリフォルニア米を食べ続ければ味に慣れ、もう国産米には戻らないと思います。こうして輸入米のシェアが上がり消費者は国産米に拘らなくなります。今の米価格は農家の終わりの始まりです。