日産を苦境に追い込んだ犯人は東京地検特捜部

日産のリストラが拡大しています。5月13日の発表では2027年度までに約2万人の従業員と7工場を削減するとしていましたが、5月23日には横浜本社の売却と栃木工場の一部売却が報道されました。やろうとしていることは極めて妥当ですが、これでもまだ足りず日産のリストラは歴史上まれに見る惨事となりそうです。

この惨事をもたらした戦犯(犯人)についてヤフコメなどでは次の3人が上げられています。

・カルロス・ゴーン(ゴーン)

・内田前社長

・社外取締役

この中で最近ゴーンは見直しが進んでいるように思われます。当たり前で1993年にゴーンが日産社長に就任以降倒産寸前だった日産は躍進を続け、2017年3月期には過去最高の経常利益8,647億円を計上しています。逮捕(2018年11月)直前期の経常利益は7,503億円です。ゴーン逮捕以降日産の業績は悪化しましたが、その原因は全てゴーンの次のような政策のせいとされました。

・米国で安売りをした

・日本市場を捨てた

・コストカットばかり熱心だった

・新車の開発を怠った

そして日本人が社長になればこれらが解決するような風潮でした。結果は逆でまた倒産の危機に瀕しています。この状況になって日産の従業員はゴーンの時代がよかったことに気付いていると思われます。日産従業員の年収は自動車業界でトヨタに次ぐ高給ですが、これを実現したのはゴーンです。ゴーンの高給が批判されましたが、そのおかげで日産の従業員の高給が実現しています。トヨタの場合、豊田社長の年収を押さえることによって従業員の年収を押さえています。従業員にとってどちらが良いかは明らかです。従って日産従業員にとってゴーンを悪く言う理由は全くなかったのですが、ゴーンが外国人と言うだけで従業員もゴーンを悪く言ってきました。今この罰を受けようとしています。

ゴーン時代の業績を見ればゴーンの政策は間違っていなかったことになります。例えば米国で安売りしていたと言いますが、2017年には世界で年間577万台販売、うち北米では159万台販売し、いずれも過去最高を記録しています。米国での日産車はブランドイメージが低かったためフリートと言われる大量保有する法人向け販売が多く利益が低くなっていました。しかしその分販売台数が多くなったことで製造原価が下がっており、トータルとしては利益を確保しています。また個人も低所得者が多かったようですが、その分割賦販売が多く金融収益(割賦利息)の増加に繋がっています。当時の米国市場においてはやむを得ない売り方だったと言えます。当時の北米販売責任者はゴーンが連れてきたホセ・ムニョス氏ですが、ムニョス氏はゴーン逮捕後韓国ヒョンデの海外販売責任者に招聘され、ヒョウデの販売台数を世界3位に押し上げた功績で昨年ヒョウデ初の外国人CEOに就任しています。ゴーンの眼力は間違っていなかったということです。

このようにゴーンは日産の救世主であったのであり、日産を悪くした犯人ではありません。本当の犯人は自分らの出世のためにゴーンを逮捕した東京地検特捜部です。ゴーンの逮捕理由は有価証券報告書に虚偽の記載をした金融商品取引法違反(本当の報酬は年間約20億円なのに約10億円と記載した)と特別背任罪(会社の資金を不正に支出した)でしたが、いずれも逮捕するような内容ではありません。金融商品取引法違反についてはゴーンは年間約10億円の報酬しか受け取っておらず、ゴーンが適正報酬と考える約20億円を有価証券報告書に記載せずに受け取れる方法はないか検討していただけです。その証拠に日産は未払い報酬を計上していない(約20億円の報酬は確定していないということ)し、ゴーン逮捕後国税庁はゴーンに追徴課税していません(支払われていないということ)。特別背任についてはゴーンには自由裁量で使える予算(内閣機密費のようなもの)があり、その使途が特別背任に問われていますが、これは内閣機密費の支出を特別背任に問うようなものであり妥当性を欠きます。

普通に考えればありえないゴーン逮捕を東京地検特捜部が何故行ったかというと、2018年6月から司法取引制度が使えることになったことから、検察庁内で司法取引制度を使った逮捕の一番乗り競争が行われていたためと考えられます。司法取引制度は当時の稲田検事総長と黒川東京高検検事長が法務事務次官と官房長のコンビで実現した制度であり、検察庁内部ではこの制度を積極的に使うよう号令が出ていたと思われます。このような状況で日産の反ゴーン派の役員からゴーンの行為が犯罪に問えるのではないかという相談(司法取引の打診)が検察にあり、東京地検特捜部が飛び付いたものと考えられます。これは無理筋の話なのですが、当時の特捜部長が司法取引を最初に使った実績作りのため強引に進めたように思えます。この検察官は特捜部長後地検の検事正を経て東京地検次席検事(特捜部管轄)に就任していますが、在任中に東京地検特捜部は広島の参議院選挙違反捜査で容疑者である地方議員に不起訴を条件に容疑を認める供述(一種の司法取引)をさせています。また東京オリンピック贈収賄事件を手掛け、民間人の高橋治之氏をみなし公務員というトリッキーな理屈を使って逮捕しています。ゴーン逮捕はこの検察官がいなければ起きていません。

日産関係者は今の日産の苦境をもたらした本当の犯人は東京地検特捜部であることを知る必要があります。