日産井原慶子報酬委員長の大判振る舞いレース

日産自動車(日産)が3月末を持って退任した内田誠社長と3人の副社長に退任慰労金として計6億4,600万円支払っていたことが分かり、批判を浴びています。昨年日産の業績悪化を受け内田社長が約6億円の報酬を半額の約3億円に引き下げると発表して、高額過ぎると批判されました。このほか内田社長と3人の副社長およびCFOから中国事業責任者に移動(降格?)したジャック・マー氏には昨年約10億円の報酬が支払われたことが明かになっています(内田氏を除く4人は平均1億7,000円程度と予想される)。

日産は4月1日からエスピノーザ体制に移行し、4月24日に2025年3月期決算は7,000~7,500億円の赤字となると発表しましたが、内田体制下では1,000~2,000億円の赤字の予想となっていました。退職慰労金は3月31日に支払われたことになっており、業績見直し前に支払われたことが伺えます。日産は今後世界で約2万人を削減し、7つの完成車工場を閉鎖すると発表しており、その元凶である前経営陣がこれだけの報酬を得たことに批判が出るのは当然と言えます。

日産の役員報酬のおかしな点は、報酬が業績に連動していない点です。例えば昨年内田社長は業績不振の責任をとって約6億円報酬を約3億円に引き下げると発表しましたが、これが業績連動報酬なら自動的に下がっています。トヨタの豊田会長の昨年の報酬は16億2,200万円ですが、 内訳は固定報酬が2億8,900万円、賞与が3億2,400万円、株式報酬が10億900万円となっています。トヨタの昨年の純利益は約5兆円であり、豊田会長の報酬は純利益の約0.03%となります。これに対して日産は6,803億円の赤字ですから内田社長の役員報酬は∞%です。それよりも豊田会長の固定報酬が2億8,900万円であり、残りの13億3,300万円は業績連動報酬で、かつ株式報酬が10億900万円と約75%を占めていることに注目する必要があります。もしトヨタの業績が悪ければ豊田会長の報酬は自動的に2億8,900万円に低下します。内田社長のように自ら下げる必要はありません。これは社長や役員報酬が多い企業で一般的に取られている体系であり、トヨタが特殊ではありません。日産が特殊なのです。内田社長の報酬は固定部分が約6億円で、そのほかに業績連動報酬があったとすれば、固定部分が豊田会長の2倍であり、設定に問題があることになります。

では誰がこういう報酬体系を設定したかと言うと、日産の場合社外取締役をメンバーとする報酬委員会ということになります。昨年の報酬委員会委員長は井原慶子氏であることに注目する必要があります。井原氏はこれまで前副社長の星野朝子氏とともに日産取締役としての妥当性に疑義が上がってきました。なぜなら井原氏はプロの女性カーレーサーとして脚光を浴びてきた人であり、大企業でのマネジメント経験はないからです。そんな人が10兆円企業の取締役が務まるのかというわけです。井原氏が取締役に就任したのは2018年6月ですから、当時のゴーン会長の指名と思われます。ゴーンとしてはジェンダー・ダイバーシティのアピールとして加えたものと思われますが、ゴーン逮捕(2018年11月)以降日本人社長になってから報酬委員会委員長や指名委員に就任しています(2019年6月)。これは日本人社長がコントロールしやすい井原氏を要職に配したものと思われます。企業において役員報酬の仕組みは会社の業績を左右するくらい重要であり、その仕組みづくりには専門知識と組織運営経験が必要となりますが、井原氏は共に欠けています。それが現在批判されている役員報酬に現れています。現在の日産の苦境には井原慶子氏の存在が大きな原因となっています。