第三者委員会は弁護士業務拡大のための虚構

兵庫県の斎藤元彦知事の疑惑を告発する文書を作成した元県民局長の私的情報を井ノ本知明元総務部長が県議らに漏洩したとされる問題で、県の第三者委員会が「井ノ本氏が斉藤知事や元副知事の片山安孝氏の指示で県議3人に漏えいした可能性が高い」とした結論を斎藤知事が否定したことについて、5月28日のテレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」でコメンテーターの玉川徹氏が「これは、とんでもない話ですからね」「裁判での事実認定。であれば、もう捜査機関に対して証拠も全部開示させて、事実認定させるしかないと思います。その後の裁判しかないと思う。僕はもうこれ刑事告発して、そちらに行くしかないと思います」と語ったということです。ということは玉川氏が斎藤知事を刑事告発するという意味だと思われます。そでないとないと単なる煽り発言となり、玉川氏は煽り屋になってしまいます。

本件第三者委員会の結論は、井ノ本元総務部長と協議の場に同席した幹部およびそれらの幹部から報告を受けた片山元副知事の証言に基づいています。その証言と言うのは元県民局長のパソコンに私的情報があったことを斎藤知事と協議した場で斎藤知事から「そのような文書があることを議員に共有しといたら」という発言があったと言うものですが、常識的に考えて斎藤知事が元県民局長の私的情報を県議に漏洩するよう指示するなどありえません。それは犯罪になることくらい誰だってわかります。とりわけ斎藤知事は官僚として長い間法律の執行に当たっており、違法行為の怖さは良く分かっています。玉川氏(第三者委員会委員)が兵庫県知事の立場だったとしてそんな指示しますか?まずしないでしょう。だったら斎藤知事も同じです。協議の中でそのようは発言があったとしたら、それは議論の過程での発言であり指示ではないと捉えるべきです。「いや指示だった」というのなら録音データが必要です。

玉川氏は第三者委員会の結論を自分の意見を通すために利用したに過ぎません。第三者委員会は第三者の立場で事案を調査検討することを委託されただけで、委託者(斎藤知事)が第三者委員会の結論に従うことを約束したものではありません。その点で判決に法的拘束力を認められた裁判所の判決とは全く異なるものです。最近第三者委員会の結論に批判が多いことを見れば第三者委員会の結論も1つの参考として扱った方がよいことが分かります。

現在フジテレビの第三者委員会の報告書で性加害者と認定された元SMAPの中居正広(中居)さんが事実と異なると反論していますが、反論書を読むとフジテレビの第三者員会の調査不足が見えてきます。それは報告期限を3月末と区切ったことに起因しています。通常第三者委員会の報告期限は区切られません。なぜなら調査の過程で何が出てくるか分からず、自信のある結論に至ったときが報告期限となるからです。フジテレビの第三者委員会が3月末までに期限を区切ったと言うことは、フジテレビの最大の要望を受け入れたということであり、この時点で第三者性は消失しています。あとは期限内に調べて分かったことを委託者であるフジテレビに報告するのが委員会の任務となります。このようにして出来上がった報告書はまるでフジテレビのドラマの脚本のような内容になっていました。第三者委員会はフジテレビから委託を受けてフジテレビの問題点を探し出すのが任務であり、中居さんはフジテレビ社員ではないことから調査の、または報告の対象外です。中居さんが善意で調査に応じたことから報告書で取り上げ、脚本の一貫性を保つため性加害者と認定したようですが、これは第三者委員会の任務外であり行き過ぎと言えます。本報告書については今後このような見方が増えてきます。

最近第三者員会に対する疑問の声が大きくなっており、5月30日の日経でもこの問題を取り上げて次のように述べています。

「企業不祥事などが起きた際に設置される第三者委員会と裁判所で、認定する事実にずれが生じるケースが出てきている。会社から依頼を受けて調査する第三者委と、当事者の責任を巡って争う裁判では認定の仕方が異なることなどが背景にある。一方で第三者委の調査結果は重大な社会的制裁につながり、当事者が反発する例もある。専門家から「調査には限界がある」と指摘する声も上がる。」

第三者委員会の結論を引用するのは利益を受ける利害関係者または支援者だけであり、第三者委員会は問題の解決にならないのは明らかです。第三者委員会は弁護士業務の拡大=収入機会の増大のために弁護士業界が作った虚構です。