米高騰は消費者危機ではなく米農家危機

小泉農相の備蓄米随意契約で5kg2,000円程度の米が店頭に出始めたようです。あっと言う間の売り切れたようですから、米高騰に苦しむ人が多いことが分かります。年収はせいぜい5%程度しか上がっていないのに主食のコメが2倍になったら生活が成り立たない人が多数出るのは当然です。今回不思議なのは備蓄米随意契約に普通なら横やりを入れる自民党農林族議員やJAが静かなことです。これについては随意契約できる備蓄米はせいぜい60万トン程度であり、米の値段は下がらないという読みがあるからと言われています。

しかしこれは完全に間違っています。昨年の米の作柄は並みであり、例年並みの米が出荷されています。従って例年通り流通していれば価格が2倍になるわけないし、店頭に並ぶ米がなくなるはずがありません。明らかに流通量が操作されています。これは最近小泉農相が「ある大手卸の利益が5倍になっている」と言ったことで証明されています。卸は5次まであるようなので各段階でため込み流通量を絞っていると考えられます。こんなこと卸の独断でやれるわけがなく米の流通の約半分を握るJAが黒幕と考えられます。なぜJAがここまで阿漕なことをやるかと言うと、農協の預金を運用している農林中金が外債の運用に失敗し約1.8兆円の損失を出し、その穴埋めとしてJAグループが1.3兆円の増資に応じたからです。これはJAの預金を出資金に振り替える形で実行されたものと思われ、その結果JAは組合員に返す資金が足りなくなっています。これを取り返すには米の卸価格を引き上げ、マージンを増やすしかありません。そこで卸と結託して卸価格を上げるために米の小売価格の操縦に手を染めたものと思われます。これは計画的ですから、JA幹部には全く反省の色が見られません。「備蓄米の放出では米の価格は下がらない」とうそぶいています。

しかし悪は絶対に滅びます。JAは今米の需要がどんどん減っていることに気付いていないようです。多分小売価格が上がって取扱金額ベースでは需要の減少分を覆い隠しているのでしょう。消費者の年収は多い人で5%くらいしか上がっていない中で米の価格が2倍になれば、米の消費を半分に落とすしかありません。例えば月1人米10kg買っていたとすればこれを5kgに落とすことになります。減らした米5kg分はパンや麺になどに振り替えます。カロリーはむしろ多いくらいであり、かつ栄養バランスもよく手間もかかりません。これがどんどん進んでいます。実際最近は店頭の高価な米が売れなくなって、食パンの売れ行きがよくなっています。消費者としては対応の仕方はいろいろあるのです。要するに米は必ずしも必需品ではないということです。この結果年間で見れば米の需要は2割(約140万トン)程度落ちることになると思われます。更に最近はカルフォルニア米(カルローズ)や台湾米も店頭に増えており、これが近々年間100万トン近くまで増えると予想されます。そうなると国産米の需要は年間約250万トン減少します(700万トン→450万トン)。来年5kg3,000円まで下がったとしても上がる前の1.5倍なので米の需要はまだ下がり続け、年間350万トン程度で底打ちすると予想されます。これなら米の自給率は100%を確保できます。要するに米の食料安全保障は国産米の需要が減れば難なく確保できると言うことです。この量なら10ha以上耕作する大手農家で供給できるようになり、零細米農家が多数廃業に追い込まれます。これが分かれば今回の米高騰は消費者危機ではなく米農家危機であることが分かります。