ホンダ、日産の次はラピダスを救済?
6月10日日経はホンダがラピダスに出資すると報じました。電子版の記事の一部を引用すると
「ホンダは最先端半導体の国産化を目指すラピダスに出資する。自動運転車など次世代車の頭脳となる半導体の調達を検討する。トヨタ自動車もラピダスに出資しており、二大自動車メーカーが国産半導体の確保に道筋をつける。ラピダスの最先端半導体の量産や顧客開拓に弾みがつく。
ホンダは2025年度後半の出資を想定している。詳細は今後詰めるが、出資額は数十億円規模になるとみられる。・・」
となっています。たぶんラピダスからのリーク記事であり、ホンダには確認が取れていないと思われます。今国会で国(経産省傘下の特殊法人)がラピダスに1,000億円出資する法案が承認されましたが、その審議の際ラピダスは民間からも同額程度の出資を獲得することを約束しています。そのため多くの民間企業に出資を要請していますが、確定したという報道はありません。要請された会社はラピダスが次の3つの条件を満たしてから意思決定することになります。
1.2nm半導体の試作に成功すること
2.大量生産できることを実証すること
3.採算に乗る大口顧客を確保すること
これはホンダでも変わらないはずであり、これらの条件をクリアしていない今の段階で出資を決定することはありえません。ラピダスの現在の出資先はキオクシア、ソニーグループ、ソフトバンク、デンソー、トヨタ自動車、NEC、NTTおよび三菱UFJ銀行の計8社ですが、出資額を見ると三菱UFJ銀行(3億円)以外の7社は10億円で並んであり、お付き合い出資であることが分かります。そのため追加出資に関しては各社とも応分の出資は約束しても多額の出資は期待できません。従ってラピダスはこれらの初期出資者以外から大口の出資を集める必要がありますが、募集活動は困難を極めていると考えられます。当たり前で2nm半導体と言えば世界最大の半導体生産企業であるTSMCでさえ生産していない製品であり、半導体生産の実績が全くない新設企業ラピダスが生産できるとは考えられません。また少量生産に成功したとしても大量生産で躓いている企業が多く(サムスン電子、インテルなど)大きな障害になると考えられます。こう考えるとラピダスが今の段階で2nm半導体の事業化に成功する確率は0%と言えます。50%の可能性があれば投資可能ですが、0%は投資不可能です。そのため投資の約束が得られないのです。
ただし日産の救済統合に動いたホンダならあり得ます。日産のその後を見れば、ホンダが統合に動いたこと自体があり得ない判断だったと分かります。この際ホンダは株価が下落したことから1兆1,000億円の自己株取得を決議しています。トヨタでも行っていない巨額であり、普通なら日産との統合の見通しが着いてから行うところです。これをあの段階で行ったということは、ホンダのマネジメントレベルは相当低いことが伺えます。案の定その後2カ月程度で破談となり、1兆1,000億円はムダ金になってしまいました(2025年3月期の利益は約9,030億円なので利益を全部株主に還元した勘定)。この判断については株主代表訴訟がなされてもおかしくありません。これを見ているとラピダスへの出資決定もホンダの未熟な経営陣ならあり得ると思われます。ホンダは日産の次にラピダスを救済するつもりなのでしょうか。ホンダの自動車部門の利益率は2%弱と低く単独での生き残りは困難な状況です。ホンダのアキレス腱は幼稚なマネジメントにあります