最高裁で勝訴している斎藤知事を起訴できるはずがない

2024年11月の兵庫県知事選で再選した斎藤元彦知事とPR会社代表が公職選挙法違反(買収、被買収)容疑で告発された問題で、兵庫県警は6月20日2人を同法違反の疑いで書類送検したということです。この報道を聞いて県警は罰すべき事実があったと判断したと誤解している人がいるようですが、そうではありません。告発は余程の不備がない限り受理する決まりとなっており、受理した県警は捜査結果(書類)を検察に送付することになっています。これを一般的には送検と言っていますが、これは犯罪者を現行犯逮捕した場合も同じであり、この場合多くが起訴されることから、送検=起訴というイメージが定着しています。しかし告発されるのは警察が捜査に着手していない事件が多いことから、送検されても嫌疑不十分や証拠不十分で不起訴となることが多くなっています。特に公職選挙法違反事件での告発の場合、政争がらみが多いことから顕著です。

今回問題になっている斎藤知事の公職選挙法違反容疑も5期20年続いた井戸田県政下で利益を得ていた勢力が、斎藤知事になって利益を失ったことから追い落としを図る一環として告発したものと言えます。1昨年から続く元県民局長の告発文マスコミ配布→公益通報へ言い換え→県議会の不信任決議→再選挙→22首長の稲村候補支持表明→斎藤知事再選 の延長戦と言えます。22首長の稲村候補支持表明についても公職選挙違反容疑で告発され、6月13日県警は捜査結果を検察に送付しましたが、これについては多くのマスコミが「送検」ではなく「書類送付」という表現を使っています。斎藤知事失職未遂に加担したマスコミはいまだ斎藤知事を失職させることに執念を燃やしていることが分かります。

しかし斎藤知事が起訴されることはありません。なぜなら先にも述べたようにこの問題は兵庫県の政争の一環であり、政争は兵庫県民の意思=選挙で解決するしかないからです。今回の場合、マスコミの斎藤知事糾弾報道を第1審地裁判決とすれば、県議会の不信任決議が第2審高裁判決、そして2024年11月に行われた兵庫県知事選挙が第3審最高裁判決となります。これ以上の審判は存在しません。斎藤知事の公職選挙法違反容疑の告発は、知事選挙に瑕疵があったという主張ですが選挙結果(最高裁判決)をひっくり返すほどの事件ではありません。なぜなら、

1.公職選挙法違反になるとされる「戦略的広報業務」を委託したという証拠がない(契約書にそんなこと書かれていない)

2.「戦略的広報業務」を委託することが公職選挙法の買収に該当することが周知されていなかった(総務省に問い合わせないと分からないレベル)。これは罪刑法定主義(犯罪に問われる行為は明確にされ周知されていなければならない)に反する。

3.例え形式的に公職選挙法違反(買収)に該当したとしても買収した票はPR会社の社長と従業員のせいぜい4,5票であり選挙の結果に影響せず軽微

だからです。特に3は重要で多くの公職選挙法違反事件の捜査基準として明確にされる必要があります。もちろん選挙結果に影響しないとしても多額の現金で相当数の有権者を買収した場合など悪質な場合は別です。

公職選挙法違反は軽微な違反行為を政争の具や売名行為(例えば東京都在住でありながら斎藤知事を公職選挙法違反で告発すること。告発する利益がない)に利用されることが多く、その運用(告発の受理や起訴不起訴の判断)は厳格にする必要があります。本件において検察が不起訴にした場合、告発者は検察審査会に審査を求めると思われますが、検察審査会は兵庫県民で構成されることから兵庫県知事選挙の結果が投影される(斎藤知事支持者が多く不起訴妥当の審決にある)ことになります。そもそも検察審査会(11人)は兵庫県の有権者全員(約450万人)による審査に替えて設置されているものであり、兵庫県の有権者全員が参加した兵庫県知事選挙に劣後します。要するに選挙結果には政争に関する一切の紛争を終結させる効果があると言うことであり、選挙に負けたからと言って軽微な法律違反で当選者を失脚させることはできないということです。反斎藤派の人たちは次の兵庫県知事選挙で斎藤知事を落選させることでしか思いを遂げることはできません。