JA全中200億円損失回収のためJAは米の価格操縦
一般社団法人全国農業協同組合中央会(JA全中)は、全国の農協で活用する予定だった業務管理システムの開発に失敗したことで200億円の損失が発生したことから、この損失を穴埋めするためJAビルに区分所有権を持つ6フロアを売却する方針とのことです。JAビルは大手町五丁目に立つ地上37階・地下3階建て、延べ床面積約9万㎡の高層ビルで、所有者はJA全中、全国農業協同組合連合会、農林中央金庫、NTT都市開発、サンケイビル、東京建物、三菱地所の7法人となっています。
JA全中は、「全国の農業協同組合及び農業協同組合連合会の運営に関する共通の方針 を確立してその普及徹底につとめ、もっ して組合の健全な発達を図る」ことを目的とした社団であり、端的には農協の経営指導および政治活動を行う団体です。農協経営合理化のため業務管理システムの開発に着手したようですが、上手く行かず損失処理することになったようです。農協系団体では最近農林中金が外債投資の失敗により2025年3月期に約1兆8,000億円の損失を計上し、全農と経済連が約1兆3,000億円の増資を引受け穴埋めしています。これと比較するとシステム開発の200億円の損失は小さいように見えますが、JA全中はコンサルが事業の中心であることから収入が少なく存続に関わる金額です。そこで見栄も外聞も顧みず本部フロアに売却に至ったもののようです。ということは、農林中金も全農と経済連に増資の引き受けを依頼する前にJAビルの持ち分を売却すべきだったことになります。JA全中の場合売却と言っても購入先は農林中金のリート法人が予定されており、JAグループ間での移動であり実体は何も変わりません。農林中金の巨額損失に続いてJA全中の損失の表面化であり、JAグループの経営能力の貧弱さが露になっています(JA全中には農協の経営指導する能力なし)。
これが分かると米の値段が1年で倍以上高騰した理由が分かってきます。JAグループとしては農林中金への増資資金約1兆3,000億円とシステム開発の損失200億円を取り返す必要がありますが、そのためには取扱金額(約1.3兆円)が大きい米の価格を上げるしかありません。それも10%や20%ではダメで倍単位で上げないと効果がありません。そこで米価の価格操縦に手を染めたと考えられます。これはJA全中、全農、経済連、農水省、農林中金および自民党農林族が集まって企図したと思われ、自民党農林族の有力議員である江藤農水大臣も仲間だった可能性があります。だから江藤大臣は米高騰に無策を決め込んだのです。
江藤農水大臣が「コメを買ったことはない。支援者の方々がたくさんくださるんですね。売るほどある」と発言し辞職に追い込まれた後、小泉進次郎衆議院議員が農相になり備蓄米の随意契約による放出を打ち出し、米の店頭価格がわずかばかり値下がりしているようですが、5kg4,000円近辺であり高値感は消えません。JAグループは上記損失を回収するまで米価を落とすわけには行かないのです。農林中金は農協組合員の預金を中心に総資産約100兆円を誇りますが、その半分を有価証券、それも外債で運用しています(他の民間銀行のように多様な運用を行っていない)。これはノウハウが単純で済むためですが、リスクヘッジの点では問題があるという指摘を受けていました。農林中金が金融庁監督下なら常に厳しい管理監督を受けることから今回のような巨額の損失は防げましたが、農林中金は農水省監督下だったためチェック機能が働きませんでした。農林中金を金融庁監督下にすることにはJAグループや農水省の抵抗が強いようですが、農林中金が巨額の損失を負えば米価格が高騰することが分かった以上、農林中金の監督権は金融庁に移すしかないと思われます。