熊本県は工業高校の県立高専化が必要

熊本県立大学が半導体学部の新設を行う計画を発表しました。具体的内容はこの秋までに詰めると言うことですが、黒田理事長と木村県知事が同席して発表していますので間違いなく実現すると思われます。黒田理事長の経歴を見ると、

・・東芝、慶大教授を経て、東大d.labセンター長、技術研究組合RaaS理事長を歴任。 「半導体のオリンピック」と称される国際会議ISSCCで、60年間に最も多くの論文を発表した世界の研究者10人に選ばれた・・

となっており、日本の半導体関係の審議会では必ずと言ってよい程登場する半導体研究の第一人者です。今年4月1日に県立大学理事長に就任しましたが(元東大教授の前蒲島熊本県知事が招聘したものと思われる)、その後直ぐに県立大学は中期計画を公表しました。これには当然黒田氏の意向(ビジョン)は反映されておらず、しょうもないことをするなと失望したものでした。蒲島知事になってから県立大学理事長には中央の大物学者(元防衛大学学長五百旗頭 真氏、元政策研究大学院大学学長白石 隆氏)が就任してきましたが、いずれも県立大学のバージョンアップには貢献しませんでした。両名は文系学者ですから仕方なかったのかも知れませんが、黒田氏は今後日本が注力すべき半導体の研究で豊富な実績を有しており、県立大学に黒田氏の知見と人脈を生かせる新しい学部や研究組織を創設し、県立大学をバージョンアップしてくれることが期待できました。今回の発表はこの実現と言えます。

県立大学に半導体学部を新設すると同時に、熊本県がしないといけないことがあります。それは県立大学半導体学部に繋がるように高校を改編することです。具体的には、県立工業高校を5年制の県立高専にし、高専から県立大学半導体学部に進学できるようにします。そうすれば高専での5年の教育と大学での2年(3年次編入)の教育および2年の修士教育で9年の教育期間が確保できます。工業高校3年間の教育および普通科から大学4年間の教育では使い物になる人材は育成できません。熊本大学半導体プロセス学科も40名の定員のうち20名は高専(国立高専)からの編入者となっています。普通科からの進学者を見ると最高点が工学部の電気工学科とほぼ同じであることから偏差値で選んだことは明かであり、優秀な人材は確保できません。その点高専出身者は15歳でなりたい職業を決め、5年間基礎技術を学んでいることから、大学では直ぐに実践的な教育が出来ます。そのため普通科からの進学者よりも企業にとって有益な人材に育ちます。これは高専から工学部進学者全てに言えることであり、今後高専が工学部進学のメインルートなると考えられます。

これと同じ考え方で商業高校を商業高専に改編し、法曹学科(大学は法学部に編入)、会計科(大学は経済学部や商学部に編入)、情報科(大学は情報系学部に編入)などを設けます。将来的には医療高専を設け、医学科(大学は医学部に編入)、薬学科(大学は薬学部に編入)、看護科(大学は看護学部に編入または資格取得)、理学療法科(理学療法士などの資格を取得。大学への編入も可)などを置き、大学前期課程的な役割を持たせます。この結果高校普通科はこれらの高専に吸収されることになります。

これで熊本の人材レベルは今の2倍程度にレベルアップします。木村知事は以前「高校普通科はいらない」と発言されましたが、これがその具体化になります。