米からパンへのシフト完了
総務省が7月4日発表した5月の家計調査に注目すべき数字がありました。それは価格高騰が続くコメへの支出が昨年5月と比べ8.2%減少したことです。米の値段は倍くらいになっていますから、同じ量買っていれば米の支出も倍になっているはずです。買う量が半分になったら米の支出は前年同期(5月)と同じ(0%)となります。これが8.2%減ったということは、昨年5月と比べ買う量が半分以下になっていることを意味します。
最近の店頭には米が大量にあり、少し前のような品薄感はありません。報道によるとスーパー店頭の米価格は3,600円台に下がったということですが、これは備蓄米や備蓄米と銘柄米のブレンド米の影響であり、銘柄価格は5kg4,000円台半ばです。最近は備蓄米が出ても消費者が飛び付く感じはありません。明らかに米を食べる人が減った印象です。高くて手が出なくなった所得層はもう米からパンやうどん、パスタなどに切り替えが進んだ感じです。スーパーのコメ売り場の近くにある食パンの陳列棚は1日に2回補充しているようです。その他安くなった野菜などが売れており、米を減らし副食を多く食べるようになっていることが伺えます。
こんなこと誰でも想定できるはずなのに、JAや米農家はこれくらい(4,000円台)の値段でないとやっていけないと言っています。そして備蓄米を2,000円前後で売ることに激しく反発しています。備蓄米は古古古古米まであり、もう家畜の飼料となる寸前の米であり、無償で配布してもよいくらいです。これにより米飯離れを防いでおり、反発するのはおかしいと言えます。反発する理由は「2,000円ではやっていけない」と言うことですが、誰も新米を2,000円にすることは想定していません。たぶん3,000円くらいなら消費も落ちず生産者も受け入れられるのではないかと考えられています。ここ2、3年年賃上げがあったからと言ってもせいぜい家計の収入は10~20%程度しか上がっておらず、国民の半分は倍になった米は買えません。買えるには高所得層ですが、この層は食事の洋食化が進んでおり米の消費量は多くありません。米の大量消費層は低所得層になっています。それは米が安かったから腹を膨らませ食費を押さえるのに都合がよかったからです。現在の米価では低所得層が米を買えず、パンなどに移行していますから米の需要が大きく減ります。
トランプ大統領が「日本は米不足なのに米国産米を買わない」と述べ、小泉農相が「米の輸入量は126倍に増えている」と反論しましたが、126倍と言うのは昨年の輸入量が少なかった時点を基準としているからであり、今年5月の輸入量は約2万トン(年間約24万トン。全需要の約700万トンの約3%)に過ぎません。こういう馬鹿げた反論は止めた方が良いと思います。こういう無意味な話しかしないから日米関税交渉が上手く行かないのです(例えば米国自動車メーカーが米国で生産した車を日本のトヨタのディーラーで販売するとか。ニーズがないから売れるはずがない。子供騙しの提案)。輸入米は今後増え年間50万トンにはなると思われますが、1kg当たり341円の関税が掛かっており、小売価格は5kg3,500円くらいの価格になります。たぶんこの価格でも米の主消費層(低所得層)には高く、消費量を減らすことになります。今後とも米農家を続けたいのならば、生産者は主消費層の所得を基に生産者価格を設定する必要があります。