公選法違反による首長と議員の失職は選挙に委ねる
公職選挙法違反の告発が相次いでいます。一番注目されているのは兵庫県の斎藤知事への告発(SNS戦略をPR会社に委託したのは買収に当たる)ですが、兵庫知事選で対立候補への投票を呼び掛けたとして兵庫県の22首長も告発されています。今年2月には昨年7月に行われた東京都知事選で3位になった石上伸二氏も公職選挙法違反があった(インターネット中継の費用を支払ったのが買収に当たる)として告発されていますし、今年7月の参議院選挙で蓮舫候補が投票日にSNSで投票を呼び掛けたとして公職選挙法違反という指摘をうけています(告発はされていない)。蓮舫氏が告発されていないのは、これくらいだと起訴されないという判断が働いているように思われます。そうなら斎藤知事の場合もSNS業務の委託が公職選考違反になることが周知されておらず、かつ違反になったとしても買収した票はPR会社社長と従業員のせいぜい4,5票であり選挙結果に影響しないことを考えれば、告発してもしょうがない(起訴されない)という判断になるのが相当です。これがそうならなかったのは、斎藤知事問題は兵庫県の政争(井戸田前知事派の斎藤知事追い落とし)であり、反斎藤派は知事選に負けても公職選法違反での追い落としを諦めていないからです。要するに公職選挙法違反の告発は常に政争が背景にあります。それでも違反行為が深刻なら告発も必要ですが、多くが選挙結果に影響しない軽微な違反行為です。警察検察は告発はあれば余程理由がない限り受理し、捜査の上起訴不起訴の処分を決めることになっており、警察検察の手を煩わせることになります。それに有権者に選ばれた当選者の地位を奪う起訴の基準が検察の手に委ねられるのも由々しき事態です。ここはやはり公選法違反で告発できる基準や起訴する基準を明確する必要があります。
例えば、告発できるのは選挙で投票権がある地域の有権者に限ることとするだけでも告発数は減ります。投票権がなかった人が告発して何の利益があるのでしょうか?
また買収の場合、買収された票数も重要です。選挙結果に影響を与えないような軽微な買収(非組織的買収)は起訴しないことを明確にすべきだと思われます。これで起訴される公職選挙法違反が明確になり、不安定な状態が早期に解消されます。
そして最も望まれる改正は、公職選挙法違反の罰則と首長や議員の地位の喪失(公民権停止)を分離することです。公職選挙法違反は違反として処罰するにしても、処罰により失職することはなく、失職は選挙によってのみ可能とします(首長や議員については公民権停止を選挙に委ねる。落選なら公民権停止、当選なら停止しない)。公職選挙法違反があったとしても有権者が首長や議員を続けさせたい(公民権停止にするほどの違反ではない)と判断すれば続けさせるのが当然です。公職選挙法は民意の表れである選挙に劣後します。