相嶋顧問の保釈を認めなかった裁判官を罷免訴追すべき

8月25日、大川原化工機の冤罪事件で警視庁と検察庁は、勾留中に胃癌が見つかったにも関わらず保釈が認められず亡くなった同社元顧問相嶋静夫氏の遺族に謝罪したという報道です。これまで相嶋氏の遺族は謝罪を拒否していましたが、警視庁と最高検による検証結果の公表を受け、謝罪を受け入れました。

警視庁の鎌田徹郎副総監と最高検の小池隆公安部長、東京地検の市川宏次席検事が同日、横浜市内の霊園にある相嶋さんの墓前で手を合わせて謝罪したということですから、警察検察としてはかなり真摯な謝罪と言えます。

謝罪の中で最高検の小池公安部長が

「重大な人権侵害を生じさせ、また保釈請求に対する不当な対応により治療の機会を損失させてしまったことを深くおわび申し上げます」

と述べたことに注目する必要があります。これは相嶋顧問に胃癌が発見されたため2回保釈を請求したにも関わらず検察が反対したことは不当だった、誤っていたと認めたことを意味します。

相嶋顧問勾留死亡の経緯はこうです。

・相嶋顧問は2020年3月11日、経済安保法違反(兵器転用可能な製品の輸出には経産省の許可が必要なところ無許可で輸出した)の容疑で大川原機工の役員2名と一緒に逮捕されますが、勾留中に体調を崩します。

・2020年9月15日には東京拘置所の中で出血し輸血処置を受けるなどしたため、9月29日緊急の治療の必要性を理由に保釈請求しましたが、検察官は証拠隠滅のおそれがあるとして反対し、裁判所も保釈請求を却下しました。

・さらに2020年10月7日、相嶋顧問は東京拘置所内の医師による診察検査を受け、胃に悪性腫瘍があると診断されます。10月16日相嶋顧問の勾留執行停止が認められ、大学病院を受診し進行胃癌と診断されます。しかし、当大学病院では勾留執行停止状態での入院手術は受けられない決まりだったことから、あらためて保釈請求をしましたが、検察官はまた証拠隠滅の恐れがあるとして反対し、裁判所も保釈請求を却下しました。

・その後相嶋顧問側は、勾留執行停止状態でも入院手術の受け入れ可能な医療機関を探し、2020年11月5日に勾留執行停止となり入院します。そして入院中のまま翌2021年2月7日に死去しました。

・2021年2月5日、相嶋顧問の共に逮捕勾留されていた大河原化工機社長と取締役は8回目の保釈請求が認められ約11か月ぶりに釈放されましたが、相嶋顧問は勾留執行停止状態で入院していたため保釈請求がされませんでした。また相嶋顧問の勾留執行停止に面会禁止の条件が付いていたため、保釈された2名は生前相嶋顧問と面会することも出来ませんでした。

・相嶋顧問は勾留中に合計7回保釈を請求しましたが、いずれも検察官が証拠隠滅の恐れを理由に反対し、裁判所はこれを認め請求を却下しています。

これを見ると検察官が保釈に反対するのは毎度のこととして、病気であるのが明かな相嶋顧問の保釈を認めなかった裁判所の裁判官の決定に問題があることが分かります。人権の最後の砦であるはずの裁判官に人権意識の欠片もないように思われます。これではまるで検察官の下請けです。最高検の小池公安部長が「重大な人権侵害を生じさせ、また保釈請求に対する不当な対応により治療の機会を損失させてしまったことを深くおわび申し上げます」と述べ、保釈請求に反対したことが「不当な対応」だったと認めているのですから、裁判官としても「誤りだった」と認める必要があります。

今回警察と検察は誤りを認めて謝罪していますが、裁判所、裁判官は一切謝罪していません。裁判官は憲法上身分が保証(職務執行に関して処分されることはない)されおり、裁判官の誤りを糺すには国会の訴追委員会に請求して弾劾裁判所に裁判官の罷免訴追をしてもらうしか方法がありません。請求は誰でもできますので、相嶋顧問の遺族や支援者は訴追委員会に罷免訴追を請求することで裁判官と裁判所に反省を促す必要があるように思われます。