三菱電機は日立を目指したリストラ

三菱電機は9月8日、満53歳以上の正社員と定年後再雇用者を対象に希望退職を募集すると発表しました。対象者は正社員で約8,000人、定年後再雇用者は約2,000人の計約10,000人で、募集人員は定めないということです。社員数約42,000人ですので、社員の約4分の1に該当します。ということは、53歳以上の構成比が異常に高くなっていたことになり、当然のリストラとも言えます。

リストラは日産のように業績回復のために行われることが多いですが、三菱電機の場合違います。2026年3月期の業績は売上高5兆5,217億円(前期比+5.0%)、営業利益3,918億円(同+19.3%)、税引き利益4,372億円(同+19.5%)と好調です。財務内容も自己資本比率61.9%、期末現金等残高7,573億円と盤石です。では将来の見通しが悪いのかと言うととても明るいです。それは今後市場が急拡大する防衛・宇宙部門に強みを持つほか、堅調な工場FAや電力設備市場などでも確かな製品・サービス基盤を確立しているからです。

ではなぜこのタイミングで大規模なリストラを行うのかというと、更に強い会社になるためです。三菱電機は役員報酬1億円以上が多い会社(20名のときあり)でも有名ですが、これを上回るのが日立(20人前後)です。三菱電機は日立をライバル視しているものと思われます。日立の2025年3月期の業績は売上高9兆7,833億円、営業利益9,716億円となっています。三菱電機の売上高は日立の56.4%ですが、営業利益は40.3%しかありません。それは営業利益率が日立9.9%に対して三菱電機7.1%と2.8%低いからです。三菱電機は営業利益率で日立に追いつくため、かつ営業利益率10%超に持っていくためにリストラに着手したと考えられます。

このように三菱電機は日立を目標に設定していると考えられますが、財務内容としては三菱電機が遥かに優れています。自己資本比率を見ると日立44.0%に対し、三菱電機は61.9%ありますし、期末の現金同等物は日立8,662億円に対し、三菱電機は7,573億円あります(売上高が約半分なのに)。なので、株式市場や金融市場の見方としては、三菱電機の方が安全性は高いが、日立の方が成長性は高いということになります。日立が今の姿になったのは、事業の選択と集中を進め世界で戦える事業に絞り込んだからであり、三菱電機も今後選択と集中(採算性の低い事業の売却)に動くと考えられます。ということは、三菱電機の今回のリストラは始まりに過ぎないと言うことになります。

最近のリストラは業績の良い会社が主体であり、より強い会社にするための攻めのリストラと言えます。これらの会社は好業績に伴い給料も高くなっているのですが、その結果給料と働きが釣り合わない社員も目立ってきていると考えられます。強い会社においてこの状態は我慢ならないことであり、不良社員切りの小規模なリストラは毎年行われることになると考えられます。

業績好調で給料が高い会社の社員は、厳しい生き残り競争に晒されることになります。