高市議員に奈良のシカが反省を促す
10月4日の総裁選で自民党総裁は高市早苗議員に決まりましたが、総裁選では小泉進次郎陣営のステマ事件と高市議員の「奈良のシカ」発言が話題になりました。このうち高市議員の「奈良のシカ」発言は、9月22日の演説会で「奈良のシカを、足で蹴り上げるとんでもない人がいます。殴って怖がらせる人がいます。外国から観光に来て、日本人が大切にしているものをわざと傷めつけようとする人がいるとすれば、何かが行き過ぎている」との発言です。これについては根拠が問題となり、9月24日の日本記者クラブの総裁選共同会見で質問され、高市氏は「こういったものが流布されているということによる、私たちの不安感、そして怒り、というものがある。これは確かだ」と答え、根拠は示せませんでした。こんな中9月29日日本テレビの報道番組「news every.」では、現地のガイドや飲食店経営者へインタビューし「攻撃的な観光客は基本的に見かけない」「僕は見たことない」と答える場面を放送し、現地リポートでも「取材中もシカに危害を加える外国人観光客を目撃することはありませんでした。」と述べたことを根拠に、「シカを蹴ったのは外国人観光客と断定できるものはありませんでした」と報道しました。これがネットで偏向報道と拡散され、インタビューを受けた人が特定される騒動に発展しました。これを受け日テレは「事実を報道したまで」と主張していますが、根拠薄弱であることは明らかです。それは少数のインタビューと取材時間中に見なかったことを根拠としているからです。日テレが十分取材したというなら最低1週間奈良公園に定点カメラを設置し、その結果を基に判断すべきでした。ネット民はこれをテレビ番組によくある結論ありきの切り抜き取材と感じたようです。
ただし日テレの断定するプロセスは間違っていますが、結論は間違っていません。今回の高市議員の発言では、シカを蹴ったり殴ったりする人がいることについては争われておらず、それを外国人とすることに疑義が挟まれています。
この問題について10月3日NEWSポストセブンは、江戸時代に創業され100年以上の歴史をもつ旅館の女将のインタビューを載せています。
「”シカが外国人に虐待されている”という物言いは、やや過剰といいますかズレていると認識しています。むしろシカに危害を加えられたというケースは、毎日のように見かけますけどね。今みたいに秋口だと、シカも発情期で特に気が立っていますから、不用意に近づいた観光客が襲われてケガしたり救急搬送なんて例もよくある。 そもそも奈良公園のシカは『野生』なんです。私たちみたいにシカと共生している市民以外にはこの認識がほとんどない。これは日本人も外国人もそう。身の危険を感じた観光客がシカを追い払うケースは多いと思うんですが、それをもし『外国人がいじめている』と言うのであれば、それはいろんな受け取り方をされますよ」
これが今回のシカ問題の正しい捉え方だと思われます。私も奈良公園でシカに煎餅をあげたことがありますが、いろんなシカがいて中には強引に煎餅を奪い取るものや頭をぶつけるもの、急に走り出すものもいます。大人でもびっくりするくらいですから、小さな子供なら倒れたり、泣き出したりして危険な場面もあります。こういう場合親なら子供を守るためにシカを蹴ったり殴ったりして追い払うのは当然です。こういう場面を見かけた人が「シカを蹴った」と「殴った」と表現していることが多いと思われます。少なくとも奈良公園にシカを蹴ったり殴ったりするために来ている人は日本人、外国人問わずいないはずです。
高市議員は政策は事実に基づき具体的なのですが、それ以外のことでは薄弱な根拠や思想信念に基づく大げさな発言が多く、危ない人と見なされる原因になっています。今回は奈良のシカが高市議員に反省を迫っているように思われます。