熊本空港アクセス鉄道は中止こそ賢明な判断
9月30日熊本県は肥後大津駅と熊本空港を結ぶアクセス鉄道(全長約6・8キロ)の総事業費が当初計画の410億円から670億円になる見込みと発表しました。同時に県出資の第三セクターが線路などを整備保有し、JR九州が運行を担う上下分離方式で合意しました。総事業費670億円のうち3分の1をJR九州が負担するということです。総事業費の約1.5倍への上振れは現在の物価高騰から考えると少ないくらいで、2倍もあり得ます。問題は熊本県がこれでも採算が成り立つとしている点です。その理由として乗客増を挙げていますが、これは前回の計画でも過大と言う指摘がなされており、更に積み増したことになります。素直に考えれば大赤字になります。赤字になっても給料に跳ね返らない、責任を問われることはない公務員だからできる作文です。こんなことしていたら県の担当職員は民間企業に就職した息子娘から笑われてしまいます。一方JR九州は相変わらずうまい立ち回りです。建設費や維持費がかかる線路の多くは熊本県に押し付け、運営費だけ負担するシステムを勝ち取っています。これなら乗客が伸びなくても大赤字にはなりません。熊本駅から熊本空港沿線にオフィスビルやマンション、倉庫を建設し、不動産で稼ぐ計画だと思われます。
いずれにしても熊本県は大赤字なのは確実であり、ここは冷静に立ち止まって計画を根本から見直す必要があります。最近JR九州は建設費の高騰を理由に博多駅空中都市プロジェクトを中止しました。企業の看板プロジェクトの中止はなかなかできることでなく、英断と言えます。熊本県もこれに倣い、本プロジェクトの再検討に踏み出すべきです。と言うのも空港までの交通手段について熊本県と熊本市は都市高速で熊本駅から空港まで約20分で結ぶ計画を持っているからです。鉄道では最速39分であり、明らかに都市高速の方が便利です。かつ高速だと熊本市中心部からのアクセスも鉄道より便利です。福岡空港は天神から地下鉄で約10分で行けるところが強みとなっていますが、都市高速でも同じくらいで行けます。同時に都市高速は市内の多くに乗降口があり、地下鉄駅から遠い住民にも恩恵があります。熊本市民にとっても鉄道より都市高速の方が利便性が高いと思われます。
だとしたらここは鉄道と都市高速のコストや利便性につき再検討する良い機会です。八代市の小野市長は前市長時代に決まっていたアリーナ建設を熊本県がアリーナ建設を決めたことから見直すと発表しました。熊本でのスポーツイベントの規模ではアリーナは1つあれば十分であり、小野市長の英断と言えます。木村知事は東大で小野市長とゼミの同期生であり、同じくらいの思考力があるはずですから、本プロジェクトの再検討を決められるはずです。熊本県では県立アリーナ新設や県立大半導体学部創設など金を食うプロジェクトが目白押しであり、今の県財政では耐えられません。
(肥薩線の復旧費を当初JR九州は約200億円と想定していましたが、物価高騰を考えると倍の400億円以上に上振れすると予想されます。肥薩線と同じく水害で復旧が必要となった山口県の美弥線はBRTでの復旧が決まっており、肥薩線もBRTに変更した方が賢明です。肥薩線鉄道復旧では年間10億円以上の赤字となり県の負担が重くなりますし、それに鉄道では救急車も消防車も走れません。)