使い込み頻発の弁護士協会には補償制度が必要
10月8日、依頼人からの預かり金約6億円を流用したなどとして神奈川県弁護士会は小田原市の弁護士法人と同代表の弁護士について、懲戒手続きを開始したと発表しました。 発表によると同弁護士は受任した遺産分割事件など少なくとも約70件で、依頼人から預かった不動産の売買代金など計約6億5,200円を事務所経費などに流用し、現在管理口座には約4,300万円しか残っていないということです。
また同日の報道では同弁護士法人は横浜地裁より破産開始の決定を受けたとなっています。この結果約6億円が返還不能となると予想されます。
2023年11月20日付読売新聞の報道によると依頼者から預かった高額の金銭を横領したり返還しなかったりしたとして、起訴や懲戒となった弁護士が2018年以降の5年間で少なくとも50人に上り、被害総額は計約20億円に達しています。これを見ると弁護士協会には被害者救済のための制度が求められます。
本件が載ったヤフーニュースのコメントにもありましたが、不動産取引業界の顧客救済制度をそのまま導入することも一手です。不動産取引を業として行うには、国土交通省や都道府県に登録して免許を受ける必要がありますが、営業を始めるためには業者に原因がある行為により顧客に生じた損失を補償するために営業保証金の供託や保証協会への加入が義務付けられています。供託制度では、不動産会社が個別に本社1,000万円、事務所1か所につき500万円供託所へ供託することが必要です。これにより当該不動産業者との取引で損害を被った顧客は供託した金額分の補償が確保されます。供託金が大きいため資力の無い人は不動産業者になれないので公益社団法人の保証協会を設け、加入各社が本社60万円、事務所1か所につき30万円を保証協会を通じて供託する制度があります。この場合、加盟各社の不動産取引で顧客に損害が発生したら、直接供託所に供託した場合と同じ額(60万だと1,000万円、30万円だと500万円)の補償が受けられます。
弁護士業務ではこれより遥かに大きな金額の損害が出ていますので、より多額の拠出が求められます。住宅瑕疵担保履行法で求められているような保険で担保することも考えられます。
いずれにしても弁護士による預り金などの使い込みは一定割合発生することは間違いなく、弁護士協会は被害者救済のための制度を作る責務があります。