参政党神谷代表は有権者の劣等感を刺激する戦略

参政党の神谷宗幣代表は19日、仙台市での街頭演説で、国立大学の卒業生が就職先として外資系企業を選びがちだと指摘し、国立大への税金投入の在り方に疑問を呈したと報道されました。神谷代表の発言は、

「彼らが頑張れば頑張るほど外資が大きくなり、日本企業の売り上げが減る。なぜ税金を使ってその流れを助長するのか」「(職業選択は)個人の自由はあるが、政治の目的は国民の暮らしを良くして国力を強めることだ。その枠の中で国民に選択肢を与えること(が必要)じゃないのか」

となっています。

私はこれを読んで意味が分かりませんでした。たぶん東大の優秀な学生が外資系のコンサル会社や銀行に就職する数が増えているという報道を受けての発言だと思われます。これ自体は事実だと思われます。しかし数は知れています。外資系のコンサル会社や銀行の採用数はせいぜい200~300人で、そのうち東大卒は100人もいないと思われます。日本人で最大勢力は慶大か早大ではないでしょうか。慶大や早大の学生の方が英語ができるし、コミュニケーション能力があります。外資系のメーカーや事業会社に行く学生が増えているという話は聞きません。だから「彼らが頑張れば頑張るほど外資が大きくなり、日本企業の売り上げが減る。」というのは事実ではないと思われます。

この発言は神谷代表の学歴コンプレックスの現れです。神谷代表は関西大卒であり、関西では国立の京大、阪大、神戸大が一流大学であり、関西大は二流大学です。神谷代表はこのコンプレックスを長い間抱き続けているものと思われます。神谷代表は頭の回転も速いし政策の理解力もあるのですが、発言や容貌に知性が感じられません。関西大以下の学力、知性の代表のような感じがします。この層の気持ちはよく分かっており、海谷代表の発言はこの層に刺さり支持を広げているように思われます。今回の発言は宮城知事選の参政党が支持する候補の応援演説の中でのもののようですが、宮城県には東北大学という全国でも一流の大学がありますが、県民の大多数は学力で圧倒的に劣る私大卒であり、彼らの劣等感を刺激し共感を得ようとしたものと思われます。

国立大のキャンパスに行けば分かりますが、建物の8割は理工系のものであり、予算や教官などのスタッフもそんな割合です。文系は添え物的な存在です。それは国立大学が日本の基幹産業である製造業に開発・製造技術者を供給することを目的にしているからです。日本の大メーカーは国立大卒の技術者がいなければ存在していません。

欧州大陸国(フランスやドイツなど)は国立大中心であり、大学授業料は無償の国が多くなっています。これは国立大学が国家の産業育成や維持に必要な要員の育成を目標としているからです。この結果欧州は産業競争力で世界トップクラスを維持しています。一方私大中心の米国や英国は、金融やITサービスが産業の中心となり製造業が衰退しています。理工系教育は個人的に豊かになるために入学する学生が多い私大には向いていないからです。

現在世界では経済安全保障が重視され、米国を中心に自国に必要な物は自国で製造できる体制作りが進められています。トランプが高関税を課すのは海外に移転した米国製造業を米国に引き戻す、米国に輸出している海外製造業を米国に進出させるためです。トランプが中国に脅威を感じるのは、中国が世界の製造基地になっているからですが、中国は政界中から優秀な技術者を招聘するほか理系学生を優遇し(国立大学の授業料を無償または低額にするほか企業が奨学金を出している)優秀な技術者を育成しています。工業力で日本を追い抜いた韓国の国立大学理工系の授業料は20~30万円であり、TSMCや鴻海などの世界的企業を生み出している台湾の国立大学理工系の授業料も同水準です。これに対して日本は50万円台であり、最近は60万円台への引上げも目立ちます。この結果は国立大学理工系の学生はアルバイトに明け暮れ、学業に専念できない状況になっています。これでは中国、韓国、台湾に追い抜かれるのも当然です。国立大学、少なくとも理工系は日本の産業競争力向上に不可欠の存在であり、無償化こそ目指す方向です。「税金を投入するなどけしからん」と言っている場合ではありません。

参政党は富裕層に対する貧乏層の不満(コンプレックス)、日本人の外国人に対する不満など有権者のコンプレックスを刺激して集票する戦略です。この層は今後益々拡大して日本の多数派となりますから、賢いマーケティングと言えます。参政党が政権をとれば日本はコンプレックス国家となり、優秀な人たちは排除され世界でも貧しい国になってしまいます。そんな危険性が露見した神谷代表の国立大攻撃です。