ニデック不正会計の傷は深いかも
精密小型モーターで世界一のシェアを持つニデックが不正会計の疑いで揺れています。2025年3月期決算の監査中にイタリア子会社に会計上の疑義が発生し調査したところ中国子会社などでも疑わしい会計処理が見つかったようです。その結果この9月26日に提出した有価証券報告書では、通常適正となっている監査法人(PwCジャパン)意見が「意見不表明」となっています。この理由としてPwCジャパンは「未発見の虚偽表示がもしあれば、連結財務諸表全体に及ぼす可能性のある影響が重要かつ広範であると判断した」としています。これにつきニデックが9月26日に提出した決算短信では、子会社NIDEC FIR INTERNATIONAL S.R.Lに関する 貿易取引における関税の未払いがあった、中国の子会社であるニデックテクノモータ(浙江)有限公司において、サプライヤーからの値引きに相当する購買一時金の会計処理が適切に行われていない疑いがあると記載しています。問題は修正が必要となる金額です。
ニデックはここまで順調に業績を拡大してきましたが、その原因は企業買収です。ニデックはこれまで国内外75社(2025年7月。うち海外が45社)を買収しており、これら買収企業の売上と利益が積み上がってきています。ニデックの2025年3月期決算は売上高2兆6,070億円(前年同期比+11.1%)、営業利益2,402億円(同48.4%)となっていますが、ニデック本体の割合は30%くらいと思われます。これを見るとニデックの実体は投資会社であることが分かります。ニデックの永守グループ代表はソフトバンクグループ(SBG)の孫社長と親しく長らくSBGの社外取締役を務めていた関係で投資の手法を学び、事業拡大手段として事業(企業)投資=買収を取り入れたものと思われます。買収会社が75社もあると中には見込み違いもあり、清算する会社も出てくるものですが、ニデックの場合出ていません。この原因について永守代表は「買収する会社はニデックの本業に関係がある会社であり、買収後ニデックのやり方を導入すれば業績を改善できるから」と述べていました。この通りであるとすれば驚異的ですが、私はちょっと無理しているのではないかと思っていました。その意味するところは、不振企業が整理されずに残っているのではないかということです。20~30社不振企業(見込み違い)であっておかしくありません。これらの企業が不正な会計処理で生き延びていた可能性があります。
もう1つ危惧されるのは、巨額の投資を行ってきたトランスアクスル事業の投資損失処理(減損処理)が終わっていないのではないかと思われることです。ニデックは2030年売上高10兆円を目指してきましたが、今年6月撤回しました。これは大幅な伸びを想定していた電気自動車向けトランスアクスル事業が見込み違いになったためです。この間ニデックは中国、欧州などにトランスアクスル工場を建設していますが、想定した売上(生産量)に程遠く、減損処理が必要になっていると思われます。日産やGMは中国事業が見込み違いに終わり、新設した工場を数千億円規模で減損処理しています。一方ニデックでは減損処理したという報道は聞きません。挽回可能として減損処理を先送りにしてきた可能性があります。だとすれば今回巨額の減損処理が求められる可能性があります。
これらのことを考えると今回ニデックは巨額の損失計上を迫られるかも知れません。