木村知事は蒲島知事3つ目の負の遺産
熊本県の木村敬知事が10月8日福岡県で開催された九州半導体産業展で講演した内容が熊本県民の反発を買っています。報道によると木村敬知事は台湾の半導体大手TSMCの熊本進出について、「外資系のどでかい企業が突然やってきて不安に思っている人がものすごくいる」ことを「肥後の引き倒し」に例えたほか、半導体工場が水を多く必要とする中地下水を心配する人が多いことを「なんとも言えない土着の宗教」と表現したということです。
これについて木村知事は
「肥後の引き倒しについては、TSMCの進出で良いことばかりが注目される一方、新しい動きに抵抗を感じる人が一定数いて、交通渋滞、人手不足、地下水などの課題解決に取り組むという文脈で発言したものでマイナスな言葉として使用したわけではない 」
「土着の宗教について 県外の人から、なぜ熊本の人はそんなに地下水にこだわるのか?と問われることが多く『それは熊本人の魂です』という熱い思い、つまり、地下水を守りたいという強い信念を表現するための比喩として使用した」
と述べています。相変わらず下手な言い訳です。
木村知事は昨年5月の就任以来このような発言が続いており、県民からすると「またか」という感じです。
不適切発言を順に挙げると、昨年4月16日の知事就任式で「野菜を売る人、牛の世話をする人、そうした方々のために全力で頑張るのが私たち県庁職員だと私は思っています」と述べました。これは静岡県の川勝知事が4月1日の県職員入庁式で述べて辞職の原因になった発言「毎日、毎日、野菜を売ったり、あるいは牛の世話をしたりとか、あるいはモノを作ったりとかということと違って、基本的に皆様方は頭脳・知性の高い方たちです。」を揶揄した発言であると思われます。
次に5月1日の報道で木村知事が当選祝いで貰った胡蝶蘭を熊本市内の病院や福祉施設など7か所に配ったことが明らかになり公職選挙法違反の指摘が出ましたが、その際木村知事は「事務所を閉めるまで(残り)1日、2日という中で(コチョウランを)捨てたくないという思いから回れる範囲で預けにいった」「自宅が手狭で事務所にも置けず預けただけ。相手に利益を与える意図はまったくなかった」「寄付ではない」と弁明しました。この弁明の中の「預けた」という言葉に違和感を持った人が多かったようです。
5月1日水俣病の患者・被害者団体と伊藤環境大臣の懇談会の場で団体側の発言中環境省の職員がマイクの音を切り、懇談会の後に団体が環境省側に抗議したことについて、5月10日の定例記者会見で木村知事は「あの場で事実上つるし上げになっている。大臣も環境省も」 と述べました。あの状況を考えれば誰であっても激しく抗議するのは当たり前であり、木村知事は患者に寄り添っていないと見なされました。
8月16日パリ五輪に出場した女子バトミントンの志田千陽選手、松山奈未選手および山口茜選手の3人が熊本県庁を訪問し木村知事に報告を行った場で木村知事は、「バレーのなんとかさんみたいにオリンピックが終わったら全て終わりじゃなく、みなさんには頑張ってほしい」と発言しました。これは熊本市出身の女子バレーボール日本代表キャプテン古賀紗理奈選手が引退を表明したことをおちょくった発言で、古賀選手のファンや県民の批判を招きました。
この後ここまで失言はなかったことから、県民は心を入れ替えたのかなと思っていたところ今回の発言です。
この言葉を熊本県内で熊本県人に対して述べていればまだ反発は少なかったように思われますが、県外で述べていることから東京から来た知事が熊本県人の悪口を言ったような印象になってしまいました。
木村知事の弁明からこの発言の背景を推測すると、TSMC進出により道路の拡幅と水の確保が課題となるなか、用地の買収はなかなか進まず、水については地下水の枯渇や汚染が叫ばれ、対策に頭を悩ましていたものと思われます。道路用地買収については、熊本発展のチャンスなのに素直に応じない人が多い原因を肥後の引き倒し(足を引っ張ること)に求め、地下水に拘ることを土着の宗教(根拠がない思い込み)に例えたものと思われます。これを見ると業務の進捗状況が捗々しくなく木村知事は相当苛立っていることが伺えます。
用地買収について言えば、周りの住宅用地や工場用地が高値で売買される中で道路用地の場合公示価格での買収となるので、地権者が売り渋るのは容易に想像できます。また水については、今年は干ばつで竜門ダムも取水制限が検討されたことから、飲み水を全て地下水で賄っている熊本市を中心に地下水の枯渇が心配されました。従って県庁内でも相当話題となり、木村知事はいら立ちを募らせていたと思われます。東京出身者は常に東京と比較して地方の特性を把握しますから、木村知事はこのような状況になっている原因を「肥後の引き倒し」という「土着の宗教」という特性に求めていたと考えられます。
木村知事は見た目や経歴からも多様な利害関係の調整には不得手であり、物事が合理的に進行しないことに耐えられないタイプのように思われます。この点高校時代は220人中200番くらいの劣等生だった蒲島知事(劣等生の気持ちが分かるし付き合える)とは全く異なります。蒲島知事が小野副知事に替えて木村知事を後継知事にしたのは、総務省出身であり予算確保に有利との考えに基づくものと想定されますが、土着の熊本県人に馴染めるか(付き合えるか)の判断を間違えたように思われます。蒲島知事は熊本に2つの負の遺産(1.川辺川ダムの建設を中止し多数の水害犠牲者を出したこと、2.その贖罪として毎年10億円を超える赤字が予想される肥薩線の鉄道復旧を決めたこと)を残しましたが、木村知事は3つ目の負の遺産です。蒲島知事は言われているほど名知事ではありません。