これから米業者の資金繰り地獄が始まる

11月2日の朝日新聞に“「米価暴落の可能性、国が買い取るしか…」コメ卸最大手神明HD社長” という記事が出ていました。米価は高止まりする一方で、

「スーパーの店頭において、急ブレーキがかかっている。(例年と比べて)全く動かないと言ってもいい。取引先のスーパーの9月の販売状況では、一番売れているのが(米国産の)カルローズ米。次が備蓄米、その次がブレンド米で、この三つでかなりのシェアだった」

となっています(これ以上は有料記事のために読めず)。

この状況は以前から分かっていたことで米業者の自業自得と言えます。暴落するでしょうが、暴落しても売れないはずです。と言うのは、米が高過ぎて消費者が米を食べなくなったし、カルローズの味に慣れてしまった(カルローズがおいしいと刷り込まれてしまった)からです。消費減で30%、カルローズなど輸入米へのシフトで20%、合計50%消費が減ったと思われます。2024年度のコメ消費量が約700万トンですが、これが2026年度は半分の約350万トンに減ると予想されます。鈴木農水大臣に変わって米の増産から減産に舵を切った(約730万トン→約710万トン)ようですが、こんな減産では全く意味がありません。少なくとも500万トンくらいへの減産が必要となっています。これは高齢化で減少する米農家の10年後の生産量であり、米需要が先回りして減少したことになります。来年からは余った米をどうするのかが深刻な問題になります。

これより先に問題となるのは米卸業者の資金繰りです。これは今月から現れます。

具体的に説明します。

・8月9月10月は1年分12億円(1カ月1億円)の米を仕入れる(銀行借入12億円。毎月1億円返済)

・11月から翌年10月まで毎月1億2,000万円販売(2,000万円は利益。経費に充当)し、その中から毎月1億円返済する計画だった。

・これが毎月6,000万円しか売れなくなっている。その結果5,000万円しか返済できなくなる。

・12月までに2億円返済する予定が1億円しか返済できず。

・これが来年4月には6億円返済予定が3億円しか返済できない状態となる。

・この結果来年8月からは新米を仕入れられなくなる(米の在庫があるし、仕入れ代金を借りられない)。

・来年10月には借り入れた12億円のうち6億円が未返済となる。返済の見通しなし(倒産)。

このようにして余った米は行き場を失います。暴落しても消費は戻りません。これが米バブルに踊った米業者と米農家の末路です。自業自得であり救済する必要は全くありません(もうお米券で救済する動きが始まっている)。尚JAは資金力があることから資金的には問題ありません。ただし来年は新米買入価格(概算価格)を大きく落としてきます。