司法試験はもう難関試験ではなくなった
11月12日2025年司法試験の結果が発表されました。短答式合格者3,837人が受験し、1,581人が合格、合格率41.02%となっています。うち女性合格者は479人と全体の30.3%を占めます。合格者の平均年齢は26.8歳で、最年長は69歳、最年少は18歳となっています。
予備試験と法科大学院別では次の通りです。
順位 法科大学院名 合格者数
1位 予備試験合格者 428人
2位 早稲田大法科大学院 150人
3位 京都大法科大学院 128人
4位 慶應義塾大法科大学院 118人
5位 東京大法科大学院 116人
6位 中央大法科大学院 77人
7位 一橋大法科大学院 61人
8位 神戸大法科大学院 56人
9位 東北大法科大学院 49人
10位 大阪大法科大学院 48人
予備試験合格者が全合格者の27%を占めトップです。最年少合格者は18歳ですが、この方も予備試験コースであり、予備試験合格者には優秀な人が多いことが分かります。東大法科大学院は合格者数で5位、合格率(短答式合格者に対する最終合格者の割合)は50.0%と2位(1位は京大で58.5%)ですが、予備試験コースで97人が合格しており、東大法科大学院は出来の悪い東大生と他大学出身者が多くなっていることが伺えます。
予備試験での合格者数(2025年)の出身大学上位5校は次の通りです。慶大や早大でも予備試験合格者が増加しており、優秀な学生の法科大学院スルーが進んでいるようです。
東大 97人
慶大 66人
早大 54人
京大 30人
中大 26人
このため法科大学院でも昨年から在学中の受験が認められるようになりました。結果今年は法科大学院在学生の合格者が712人になり全合格者の45.0%を占めるようになっています。また予備試験コースに優秀な学生が流れるのを防ぐため法学部3年次終了後法科大学院に進学できるコースを設けている大学もあるようです。
これらを考えると法科大学院は予備試験に合格できそうもない人が行くコースになっているように思われます。実際予備試験合格者に優秀な人が多いとして、大手弁護士事務所では予備試験合格者を多く採用しているようです。予備試験コースでは司法試験予備校伊藤塾出身者が多いようですが、伊藤塾の講師を見ると司法試験上位合格者が多くなっています。一方法科大学院で教えるのは法曹資格を持っていない(司法試験に合格していない)法科大学院教授や準教授などが大部分であり、彼らの多くは「予備校の講師じゃないから司法試験のための授業はしない」と言っているので、予備試験合格者が優秀なのは当然と言えます。また今の制度の合格者と旧制度の合格者を比べると旧制度の合格者が遥かに優秀だったと言われており、法科大学院制度で法曹の質が低下したことが明かになっています。法科大学院制度では半分程度は司法試験に合格するという制度設計なので、合格基準が緩くなっていると考えられます。
今年は元テレビアナウンサーの山本モナさんが3人の子供を育てながら5年かけて49歳で、東大野球部で日本ハム、ヤクルトで5年プレーした宮台康平さんが東大法科大学院在学中に一発合格したことがニュースになりました。いずれも凄いことですが、これは現在の司法試験の難易度が相当下がっている証左でもあります。旧試験制度の下ではまずありえないと思われます。
ここまで難易度が下がった原因は法科大学院が合格させるための制度であること以外に、法曹志望者が激減しているまたは優秀な人が志望しなくなったことがあると思われます。原因としては、法曹の仕事が犯罪人や揉めている人を相手にすることから決して楽しくないこと(友人の弁護士曰く「社会のドブ浚い」)、収入が低い弁護士も多いこと、テレビのコメンター弁護士がイメージを悪くしていることなどが考えられます。
もう法科大学院を廃止し、憲法違反である受験回数制限(資格試験で受験回数制限をしているのは司法試験だけ)を撤廃して旧司法試験制度に戻した方が良いように思われます。