宅建は一般受験者に乗っ取られた
11月26日宅地建物取引士試験(宅建)の合格発表がありました。245,462人が受験し、45,821人(18.7%)が合格となっています。合格者の平均年齢は36.2歳で、仕事に必須な資格である不動産業の合格者は33.2%となっています。この試験は元々不動産業者とその従業員に関係法令を徹底するために設けられたのですが、一般人に乗っ取られてしまっています。
一般人の受験が増えた結果優秀な受験者が増え、不動産業者やその従業員の合格者が減少しているようです(5点免除の特権があるのに)。今年の合格最低点は33点(50点満点=50問)となり、昨年の37点を4点下回りました。10月19日に試験がありましたが、終了後ネットでは「難しくなっていた」という声が溢れていました。難しくなっていた理由は、問題が25ページから27ページに増えたこと、個数問題が昨年の6問から11問に増えたことです。通常の問題が4択から正しい記述(選択肢)、または誤っている記述を1つ選ぶようになっているのに対し、個数問題は3つの記述に正しい記述または誤っている記述が何個あるか(0個,1個,2個,3個が選択肢)を選択させるものです。4択から1個選ぶのなら、正しい記述または誤った記述が1個分かれば(他の3つは分からなくても)正解を出せますが、個数問題の場合3つの記述を正しく判断できないと正解が出せません。そのため個数問題が5問増えたと言うことは3点くらい得点が減っておかしくないということになります。そのうえ問題のページ数が2ページ増えていたということは問題文が長文化したと言うことであり、問題が複雑化したことを意味します。
今回私も宅建を受験し37点で合格しました。私が試験中に異変を感じたのは「残り30分です」(全2時間)というアナウンスがあったとき、まだ15問も残っていたからでした。試験勉強で過去問を解いた際には45分くらい残っていることが多かったので、大慌てでした。その日の夜TAC(資格スクール)で解答例が公表されていたので自己採点したら34点でした。昨年の合格最低点は37点であり落ちたと思いました。そしたら最後に今年の合格最低点予想は34±1となっており、首の皮1枚残りました。TACの解答例には疑問があるものがあったので、後日日建学院の解答例で採点したら37点でした。なんと3点も違っていたのです。合格発表と同時に公表された解答例は日建学院と同じでしたので、TACの解答例は3つも間違っていたことになります。TACの解答作成者は処分ものだと思われます(アルバイト講師?)。
合格発表以降ヤフーニュースには芸能人らが宅建に合格したというニュースがいくつか出ていました。Jカップグラドル天月愛さん(37点で合格)、天才ゴルフ少女須藤弥勒さんの兄桃太郎さん(高校1年生で合格)、日テレ森圭介アナです。いずれもスポーツ紙が「難関の宅建試験に合格!」と書いたことから、ヤフコメには「宅建は難関試験じゃない!」「運転免許試験に毛の生えたようなもの」などの誹謗中傷コメントが多数見られました。中には「37点で合格できる国家試験があるの?そっちの方が凄いね」(100点満点と間違えている)というお馬鹿なコメントも見られました。
宅建は難関試験ではありませんが、易しい試験でもありません。合格発表があるまでハラハラドキドキのスリルが味わえる丁度良い試験だと思われます。試験慣れしている人、大企業の大卒社員なら3カ月の勉強で取れると思われますが、6カ月ぐらいみた方が安全です。試験が不得意の人でも資格スクールに通えば合格のノウハウを教えてくれるので合格できます。私は独学(3カ月)でしたが、資格スクールが作成したアマゾンでベストセラーになっていたテキストを使いました。これを見て驚いたことは、テキストが過去問の内容から構成されていて、暗記事項の列記になっていることです。テキストに「このテキストは満点を取るためのものではなく効率よく合格点をとるためのものです」と書いてありました。宅建試験の答えは宅地建物取引業法(宅建業法)、都市計画法、建築基準法、民法など不動産関連法の条文が根拠となっていることから、条文に当たる(参照する)ことは不可欠ですが、テキストおよび過去問の解説に条文は1条も掲載されていません。条文に当たるのは時間の無駄との考え方のようです。確かに多くの人がこのやり方で合格していますので合理的と言えますが、法律の勉強としては邪道であり、宅建のステータスが上がらない原因です。
実は宅建は不動産業者が悪さをするのを防ぐための資格であり、そのための試験内容となっています(宅建業法からの出題が20問と最大)。不動産業者というと一般の人は胡散臭さやトラブルを思い浮かべるように、野放しにすると必ず消費者に損害を与えます。そのため宅建業法を制定し、箸の上げ下げまで規制しています。重要事項説明書や媒介契約書、取引契約書も国交省作成のものが使われていますし、不動産業者が顧客との間にトラブルがあれば多くの場合不動産業者が処分(業務停止、免許取消、懲役、罰金など)されます。例えば宅建士が重要事項説明書を説明する際に宅建士証を見せなければ10万円の過料です。誇大広告があれば6カ月以下の懲役または100万円以下の罰金および併科となっています。このことを消費者が知らないこと、県の監督部署が周知しないことおよび違反の取締りに積極的でないことから、多くの場合トラブルがあっても消費者の泣き寝入りになっていますが、不動産業者には抑止力になっています。消費者は不動産取引に当たって不動産業者との会話は録音する、特に宅建士による重要事項説明書の説明は必ず録音することをお奨めします。不動産業者とトラブルになったら業者を免許取消し、宅建士を登録消除(取消)処分にできます(損害賠償も勝ち取れる)。これが分かることが一般人が宅建に合格する唯一の意義です。
不動産取引は人生において必ずあることであり、宅建士の勉強(資格)は一般人にとっても役に立つはずです。自宅の購入前に取得するなど今後益々人気化すると思われます。