AIには創造性がないという弱点がある
株式市長ではAI銘柄が高騰しています。AIがまるで夢の国を作るように扱われています。コンピューターの世界は目に見えないため概念が先行し、実体が伴わないケースがこれまで何回かありました。今のAIブームが少し違うのは、半導体の技術革新と大規模なデータセンター投資を伴っていることです。AIブームの中心にいるNVIDIAはGPUで圧倒的なシェアを誇りますが、GPUは実物商品であり製造が必要です。NVIDIAは工場を持たず製造はTSMCに委託していますが、GPUボードを作るには基盤上にGPUやCPU、HBM(メモリー)などの半導体素子を配置する必要があります。GPUの需要拡大に伴いCPUやHBMの需要も拡大し、これらの製造に必要な半導体製造機器や部材メーカーも活況を呈しているようです。このように今のAIブームはAI製造業が売上、利益を伸ばしているという特徴があります。
一方一般人がAIでイメージするのはchatGPTなどの対話型生成AIサービスですが、期待だけが先行し、収益が伴っていないように思われます。chatGPIを発表したOpenAIの2025年上半期(1–6月)の売上は43億ドル、営業損失は78億ドル、最終損失は135億ドルとなっています。今後8年間でデータセンターのインフラ構築に1.4兆ドル(約216兆円)以上の投資を計画し、2028年のみで740億ドル(約12兆円)の損失を出すと見込まれています。openAIが対話型生成AIで世界のデータセンターとなる計画のようですが、資金が巨額であることと対話型生成AIがもたらす利益が確定しないことから事業の成長性に確信が持てません。
現在対話型生成AIの限界が少し明らかになっています。それは対話型生成AIサービス企業が著作権侵害で訴えられるケースが増えてきたことからも伺えます。私もネット検索でAIをよく利用しますが、確かに分かり易い説明が返ってきますが、中には見たことがある内容が含まれています。他の著作物から引用しているものと思われます。これから分かることは、AIはネット上に公開されている著作物の内容をまとめているだけであり、創造性や新規性はないということです。だからAIの生成物は平凡です。それが今会社などで持て囃されているのは、AIが生成する内容(資料)が自社の社員が作成する資料より優れていることが多いからです。要するに会社にはAI以下の社員が多数いるということです。会社におけるAIの使われ方としては、AIで基礎資料を作成し、社員はそれをブラッシュアップするということになりますから、社員には高い問題解決力や創造性が求められてきます。そう考えるとAIが社員を選別することになります。
それでもAIが利用するデータがネット上で公開されたデータや社内データであることを考えるとAIが作成する資料は新規性や創造性がないものとなることは明らかであり、高い利益はもたらさないことになります。これが良く分かったのがユーミン(松任谷由実)がAIを使って作った新アルバムでした。これはユーミンのこれまでの曲を学習させたAI(AIユーミン)にユーミンが作詞作曲した新曲を歌わせたものですが、ユーミンの良さが剥がれ落ちていました。本人もテレビ番組で今の時点ではAIによる歌作りは不十分と言っていました。特に作詞は全然ダメで使えないと言っていました。ここにAIの限界があるように思えます。即ちAIを使えば世間並の作品は作れるのですが、それ以上のものは作れないのです。従って“一番以外はビリ”のビジネスの世界での活用には限界がある(高い利益は生まない)ことになります。AIブルームの終焉はここら辺にありそうです。