国立大理工系は授業料免除で科学技術振興

12月10日の衆議院予算委員会で国民民主党の玉木代表が下記のようなデータに基づき、大学運営交付金の増額を訴えました。

・中国は大学向けの研究開発予算をこの20年で24.5倍、韓国は5.3倍、アメリカは2.7倍しているのに日本は0.9倍と逆に減らしている

・博士号取得者の数が主要国で減っては日本だけ

・自然科学先端分野64のランキング(オーストラリアのシンクタンク作成)で、中国は57分野で1位、アメリカは7分野で1位、インドが45の分野で5位以内、韓国が24分野で5位以内、日本は5位以内に入っているのは8分野のみ

私はこれに加えて大学生の授業料が中国や韓国、台湾と比べ倍以上高いことも挙げたいと思います。

・中国の一流国立大学(北京大学や清華大学など)の授業料は年間10万円で、理工系は奨学金が出るのでお金を貰って研究している状態。これに対して日本の東大は年間約64万円、京大は約53万円。

・韓国の国立大学授業料は年間25~30万円

・台湾の国立大学授業料は年間20~30万円

日本の国立大学に国から支給されている運営費交付金は長い間下げ続けられ、2023年度以降1兆784億円で据え置かれてきました。そしてこの12月の補正予算で421億円が追加で支給され、2025年は1兆1205億円になるということです。

欧州大陸国(フランス、ドイツ、オーストリア、ノルウェーなど)は国立大学中心であり、大学授業料はほぼ無償となっています。これは国立大学は国の科学技術水準を引き上げるまたは維持するための基盤であり、受益者は国だからとの考え方に基づいています。その結果これらの欧州大陸国は歴史が古い国が多い中で科学技術は先進国の水準を維持しています。一方米国や英国では私立大学中心であり、大学教育は貴族や富裕層の特権と見なされ、教育には高い費用が掛かるのは当然と見なされています。その結果私立大学の年間授業料は500~1000万円と高額になっています。

慶大の伊藤塾長は中教審の場で英国および米国の私立大学の授業料と比べ日本の国立大学の授業料は安すぎるとし年間150万円への値上げを主張しました。慶大は日本の富裕層の子弟が集まる大学であり、年間150万円の授業料は痛くも痒くもないのでしょうが、日本の世帯平均年収が約450万円であることを考えると、年間150万円と言う金額は多くの優秀な若者が大学進学を諦めざるをえない金額です。もしこれが実行されれば日本の国立大学理工系学部に優秀な学生が集まらなくなり、日本の科学技術発展を支える人材がいなくなってしまいます。日本の私立大学トップである慶大と早大からノーベル賞受賞者が出ていないのを見れば分かるように、日本の科学技術は国立大学理工系出身者が支えています。これは日本の大きなメーカーに行けば歴然としています(早慶が強いのは金融サービス)。

これから分かることは、日本の国立大学理工系は欧州大陸国のように無償にすることが日本の国益です。日本では大学教育の受益者は学生個人であるとして授業を上げてきましたが、理工系教育については国家が受益者です。一方文系教育については学生個人が受益者という面も強いのは事実であり、国立大学であっても無償化は必要ないように思われます。また文系教育はネットの発達により通学しなくても自宅で授業を受けることが可能であり、文系学部は通信大学への移行が可能です。これにより文系の優秀な学生が理工系に進路を変えることになり、理工系学生の増加に繋がります(文科省が目的とする理工系学部生4割も達成可能)。

国立大学の授業料収入は約3,500億円であり、授業料無償化には約3,500億円しかかからないことになります。これで学生が勉強や研究に集中できれば(単位認定や卒業も厳しくする)、日本の科学技術の水準が大きく向上し、企業の収益増加などの形で日本の財政に貢献します。日本にとってはこっちの方がずっと得です。