同性婚については憲法問題ではなく立法問題

同性同士の結婚を認めない民法や戸籍法の規定(届け出が受理されない)が「婚姻の自由などを定めた憲法に違反する」として、同性カップルら8人が国に賠償を求めた訴訟で、東京高裁は先月11月28日、原告らの請求を退け、いまの規定を「合憲」とする判決を出しましたが、原告らはこの判決を不服として最高裁に上告したということです。同様の裁判はこの裁判を含めて6件起こされていますが、ほかの5つの高裁判決は民法などの規定が憲法14条や憲法24条2項に「違反する」と判断していますので、これにより最高裁が統一判断を出すものとみられます。

上告者が根拠としている憲法条文は次の通りです。

第十四条 すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

第二十四条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。

② 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

第14条と24条の関係は、第14条が全体の総則で第24条は結婚生活に関する総則(考え方)になっているように思われます。上告者は第14条と第24条2項を根拠としており、第24条1項をわざと飛ばしています。第24条2項は1項を受けての規定であり、1項を飛ばして2項を根拠とするところに不自然さがあります。1項は「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し」と規定しており、結婚は異性間で成立すると考えていることは明確です。従って今の憲法において同性婚を認めていると解釈することは不可能です。従ってこの規定に基づいて男女間の結婚を前提した民法や戸籍法の規定は何ら問題ないことになります。

ただし同性婚を憲法が禁止しているかどうかは別問題です。現憲法が想定している婚姻は男女間のものであり、同性婚は想定していません。これは憲法制定当時同性婚は制定者の頭になかったということであり、禁止を意味していたこではありません。従って民法や戸籍法に同性婚についての規定がないからと言って現憲法に違反する、即ち現民法や戸籍法は違憲であると言えないと考えられます。判断を求められた裁判官の判断として、「同性婚については現憲法に規定がない」から現民法や戸籍法は「違憲とは言えない」ということになります。違憲としたとされる5つの高裁も同性婚を婚姻と同様に扱うべきというのではなく、同性婚についても何らかの法的保護が与えられるべきだと言っているようです。

憲法は制定当時の普遍的思想や国民のコンセンサスがある考え方を文書化したものであり、現憲法制定当時同性婚はほぼ無かったし、議論にも上らなかったと考えられます。従って同性婚に関する規定が現憲法にないのは当然と言えます。憲法は国民のコンセンサスを文書化するものですから、現在同性婚が国民のコンセンサスになっているのであれば憲法に規定すればよいし、規定しなくても民法や戸籍法を改正するか、新たな法律を制定すればよいことになります。問題は同性婚が国民のコンセンサスになっておらず、憲法に規定する機運はなく、かつ民法や戸籍法を改正する、あるいは新たな法律を制定する機運もないことです。その状況を分かっている同性婚者や希望者が裁判所を動かして民法や戸籍法を改正させよう、新たな法律を制定させようとしているのが同性婚訴訟です。これは素直な手順ではなく、同性婚者や希望者は支持者を増やして国会に民法や戸籍法の改正や新たな法律の制定を働きかけるのが筋です。今の状況では憲法への明記は望むべくもありません。裁判所は現憲法の素直な解釈に基づいて判断するのが使命であり、現憲法の規定上同性婚については「既定されていない」ことから、現在の民法や戸籍法は「違憲とは言えない」あるいは「合憲である」という結論にしかならないと考えられます。裁判所が違憲判決を出せるのは誰が考えても違憲である法律に対してであり、新たな憲法条文を書き加えるような判断をしてはいけないと考えられます。