占い師同然の開業医が医療費チューチュー

政府は2026年度の診療報酬の改定で、医療従事者の人件費などに回る本体部分を3.09%引き上げることを決めたようです。1996年度の3.4%以来30年ぶりの引上げ水準となるとのことです。日本医師会の幹部にとっても「首相が代わると、こんなに改定率が変わるとは。」というサプライズのようです。

昨年度一般病院(20床以上の病床を持つ医療機関で、大学病院や地域の中核病院などを含む)の72.7%が赤字で、損益率はマイナス7.9%となっています。損益の中身をみると、入院や外来などの収益はおよそ45億円で、これにかかる費用はおよそ48億6,000万円で、差し引き3億円以上の赤字となっています。費用では診療材料などの消耗品費、給食用材料費、水道光熱費などが前年度比で5%以上増加しているということです。これは最近の物価上昇を考えれば理解できる状況です。これでも一般病院は来年度も赤字になると思われます。

今回の診療報酬大幅引き上げの決定は、自民党の議員連盟「国民医療を守る議員の会」が12月4日高市早苗首相と官邸で面会し、経営が苦しい医療機関の支援のため2026年度の改定で診療報酬の大幅な引き上げを求める要望書を手渡したことが背景にあります。これ以外にも開業医の団体である日本医師会が自民党の岩盤支持団体であること、公立病院など病院の団体である日本病院団体協議会(日病協)が自民党総裁選で高市首相を支持したこと(そのため元日本医科大学教授松本尚自民党衆議院議員がデジタル庁担当大臣に就任)など次の選挙や総裁選対策という面があります。

問題はこの診療報酬が健康保険料引き上げや増税に繋がることです。医療費は48兆円(2023年度)に達しており、その原資は健康保険料約24兆円、税金約18兆円、患者負担約6兆円となっています。診療報酬が引き上げられると真っ先に健康保険料が引き上げられることになります。12月19日に所得税が発生する年収の壁が現在の160万円から178万円に引き上げられることが決まり、来年度から所得税が数万円安くなると言われており、これを引き上げ原資と考えているようです。しかし国民の多くは物価高騰で使えるお金が減少しており、食費を削って生活しています。従って年収の壁引き上げによる手取りの増加は食生活の改善に充てられる必要があります。

やはり診療報酬の増加は医療費総額が増えない形で行う必要があります。現在経営的に苦しく助成する必要があるのは病院であり、開業医は平均年収が3,000万円超と言われて恵まれています。開業医がこの年収に相応しい仕事をしていれば文句ありませんが、開業医の仕事ぶりには大いに疑問があります。ヤフコメでも指摘が増えていますが、診断の根拠(エビデンス)が不明であり、碌に問診や検査もせずに薬を出します。「とりあえずビール」みたいな薬の出し方です。従って開業医が出す薬の7割は効いていないと言われています。大学医学部の研究発表会に行けば分かりますが、医学ではエビデンスが絶対とされ、エビデンスがない治療は民間療法として蔑まれています。しかし開業医はエビデンスなしで薬を出しており、民間療法をやっていることになります。保険治療ではエビデンスがない限り薬を出せないようにすえば、処方薬は半分に減ります。

また開業医の診断結果は誰もチェックしないことも問題です。NHKの医療番組ドクターGをみれば分かりますが、本当の病名は指導医でもなかなか当てられません。研修医や勤務医は指導医のチェックを受けますから、間違った診療を続けることは少なくなりますが、開業医の場合、一度間違った診断や処方をしたらそれをずっと続けることになります。従って開業医のカルテをチェックする機関があれば、誤診は減るし医療費も減らせます。

開業医の固定客は慢性患者であり、毎月受診しないと薬を貰えません。慢性疾患の場合症状は変わらない場合が多く、毎月受診する必要は無く薬は調剤薬局で貰えば十分です。これで慢性疾患の医療費はずいぶん減ります。慢性疾患の代表例である高血圧症の場合、以前は89~139Hgが正常値でしたが、いつからか80~130Hgが正常値とされました。これも医療費削減の見地から保険治療の場合元の89~139Hgを正常値として扱えばよいと考えられます。

今の医療費は青天井になっており、現役世代の負担の限界に達しています。保険治療は標準療法で行うこととし、先端医療や高額医療は保険外治療(自費治療)とする必要があります。年金と同じように老後の医療費は個人が積み立てておくことも考えられます。