角田夏実VS木更津総合女子柔道部の試合は秀逸

12月18日放送のTBSモニタリングという番組で、パリオリンピック女子柔道48kg級金メダリストの角田夏実選手が千葉の茂原北稜高校女子柔道部の一員として強豪木更津総合高校女子柔道部5人の選手と勝ち抜き戦を行う様子が放送されました。私はこのことをヤフーニュースで知り、TVerで見てみました。結果今年見たTV番組で一番感動しました。

木更津総合高校の5人は県大会52kg級2位の大西さん(1年)が先鋒、同1位の山田さん(2年)が次鋒、同57kg級ベスト16の野島さん(2年)が中堅、同57kg級1位の佐藤さん(3年)が副将、同48kg級1位の若林さん(3年)が大将という錚々たるメンバーです。特に佐藤さんと若林さんはインターハイにも出場しており、若林さんは全日本強化指定選手です。

先鋒の大西さんが楽々と1本勝ちで4人抜くと木更津ベンチでは「5人抜きだね」「今日は出番ないね」「相手はデビュー戦だから優しくね」などの声が飛び交っています。ここで北稜の大将角田さん(数合わせの新人佐藤さんということになっている)の登場となり、大西さんは初め道着を持たせるなど優しい対応をしますが、直ぐに仕留めようと自分の組み手を取ろうとしますが、角田さんが取らせません。それを見て木更津総合ベンチでは「え、組み手やってる」「組み手で碧(あおい)が負けてる」との声が出始めます。その後角田さんの足技で大西さんが倒れると「えー、嘘」「格闘技やってる?」との声が出ます。その後角田さんが大西さんを小内刈りで倒し寝技に移行すると木更津ベンチでは「強」「聞いてないよ」「誰?」などの声が出て次鋒の山田さんが準備運動を始めます。

山田さんとの試合は最初から激しい組み手争いとなります。解説のウルフ・アロンさんによると「角田さんは巴を使っていないだけでガチの試合」だそうです。これを見て木更津ベンチでは「力強」「うま」の声がでます。この試合では角田さんが山田さんに有利な組み手をさせず、山田さんが無理な姿勢から大内刈りに来たところを浴びて倒しのような形で1本を取ります。解説のウルフさんも何があったわからない様子のところ、木更津ベンチは「え?」「え?」「え?」となっていました。負けた山田さんの感想は「力が半端なく強い」「初めてとは思えなかった」でしたが、2試合を見た佐藤さんは「相手になってないよ。」と言っています。そして中堅の野島さんには「3分頑張ってこい。そうすれば2人(佐藤、若林)で行くから」と話します。完全にスタミナを奪い引き分け狙いです。

ここで野島さんが飛び出しますが、角田さんは野島さんが57kg級の選手であり、身長も170㎝前後あることから、これまで封印していた巴投げを使うことを決心します。それも開始30秒で決め、1本にならなかったことから腕ひしぎ逆十字に移行しタップを奪います。これを見た木更津ベンチは全員「え!」「うま!」と驚きの表情で、若林さんは頭を抱えたあと「え、待って。角田夏実じゃない?あの巴の入り方は角田夏実だよ」と言い出し、ほぼバレます。若林さんに対策を聞かれた加藤さんは「入った瞬間分かんない」、これに若林さんは「やばいじゃん、どうやって耐えんだよじゃあ」。

この後は攻めだるまを思わせる佐藤さんですが、ここで審判をやっている監督(30歳前後の女性)がやってきて、「おい佐藤、負けるわけにはいかないからね。本気で行って本気で勝ちに行けよ」と発破を掛けます。佐藤さんが粘って角田さんのスタミナを奪う作戦であること知って、正々堂々と勝負を挑むことを求めたようです。佐藤さんも相当の強者で体格では角田さんを上回り、組み手争いでも角田さんに負けていません。それでも角田さんは右の握力が半端ないようで相手の左肘付近の袖を持つと直ぐに巴投げを仕掛けてきます。佐藤さんはこれを空中で体を捩じって技ありを防ぎ、更に左腕を引いて腕十字への移行を防ぎます。ここで苦しくなった角田さんはこれまでばれないように付けていたマスクを外します。これで木更津ベンチは全員角田さんと認識します。結局佐藤さんは4度巴で投げられましたが、3度は逃げて腕十字も決めさせませんでした。これにはウルフさんも「これ程角田さんの巴と腕十字が決まらないのは初めて見た。貴重な記録」と言っていました。結局4回目の巴で逃げられず技あり1本を取られて負けるのですが、観客が多ければ大拍手な戦いでした。佐藤さんの試合後の感想は「怪物」でした。

次に大将若林さんの登場ですが、さすが全日本強化指定選手です。この試合についてウルフさんは「モニタリングでやる試合ではない」と言っています。試合が始まると組み手争いが半端ありません。更に組み手争いの最中に足技が飛んでいます。ここでも角田さんは少しでも巴を使える組み手になると巴を繰り出します。その度に若林さんは空中を舞いながら体を反転させ逃げます。若林さんは48kg級なので巴投げで体が綺麗に空中を飛ぶのですが、体のバネや運動神経で決まるのを防いでいます。若林さんも角田さんの巴投げを研究しているようで何度か角田さんに巴を仕掛けます。1度は角田さんの体が空中に上がり移動しましたが、ひっくり返すまでは行きませんでした。一度は両者が共に巴の体制に入り2人が膝を付き合わせて座り込む場面がありました。角田さんは3度目の巴で技ありを奪い、残り1分を切って角田さんが巴の体制になり、それを若林さんが四股を踏むような形で完全に防いだように見えましたが、角田さんは膝と両足を使って強引に巴で投げ技あり1本を奪いました。木更津ベンチは「え!うま!」と脱帽です。この試合を見たウルフさんが「僕が解説できる域を超えています」と言ったくらい高度な試合でした。負けた若林は一言「強かったです」。

ヤフーニュースを見るとこれに感動したと言うコメントが多く寄せられています。角田さんと木更津総合高校女子柔道部員との実力差は10:5,6くらいだと思われますが、彼女らは違いが分かる、学べる実力を有しています。今回角田さんと試合をした部員たちは今後この試合の録画何度も見て角田さんの技を学ぶでしょうから、急激に強くなることが予想されます。

この試合の審判をした木更津総合高校の監督が選手が技を仕掛けると笑顔をこらえる場面が何度か映り、監督としても至福の時間だったようです。今回の放送で木更津総合高校女子柔道部の強さと雰囲気の良さが全国に伝わり、全国から有望な中学生が入部することが予想されます。

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