現司法試験は旧司法試験の3~4割レベル

昨年の司法試験合格者は例年になくマスコミで取り上げられました。私の関心を引いたのは元アナウンサーの山本モナさん、寿司屋の女将畠伸子さん、元日本ハム・ヤクルト投手宮台康平さん、東大野球部2年在籍中のスタンリー翔唯さん、石垣島在住の内原はな恵さん、慶応女子高3年在学生です。最初「凄いな」と思って見ていましたが、だんだん「何かおかしい」と思うようになりました。私の知っている司法試験(旧司法試験)では絶対に合格できないようなキャリアや勉強時間で合格しているからです。

旧司法試験と現司法試験の受験者数、合格者数、合格率を見てみると、

昭和50年の司法試験は出願者数27,791人(短答式を受験する)、合格者数472名、合格率1.70%です。それが2025年の司法試験では、受験者数は法科大学院コースが3,365人(短答式受験者数)、予備試験コースが12,432人(同)、合計で15,797人と半分くらいに減少しています。一方合格者数は1,581人(法科大学院コース1,153人、予備試験コース428人)と3倍以上になり、合格率は10.00%になっています。単純に考えると合格者数が3倍になったことで合格者のレベルは1/3に、受験者数が1/2になったことでレベルは1/2になり、合わせて合格者のレベルは1/6(1/3×1/2)になったとも言えます(合格率が5.9倍になっているからも言える)。これは極端過ぎますが、大幅にレベルダウンしていることは間違いありません。

寿司屋の女将さんである畠さんは50歳で法科大学院コースでの合格のようです。難関大学法学部卒ならまだあり得ると思いますが、大学は日本福祉大学の福祉学部卒ですから理解を超えています。内原さんも龍谷大学法学部卒で、法科大学院コース卒業後1回で合格したとなっていますから驚きです。

一方旧司法試験に合格した弁護士を見ると、日本テレビ「行列ができる法律相談所」に出ていた北村晴男弁護士は8回目、菊地幸夫弁護士は6回目、関西のTVコメンテータで人気がある三輪紀子弁護士は7回目、森雅子自民党代議士(元法務大臣)は5回目で合格しています。三輪弁護士が「司法試験って、ずっと同じ母集団が受験して受かった上の層がいなくなって、次に自分の番が来るような試験ではないんです。常に新しい賢い人たちが受けに来て、その人たちがライバルになっていく。」と言っているように、旧司法試験では長く勉強している合格予備軍の層が厚く、いつ自分の番が来るか分からない試験でした。これが今では法科大学院に行ったら殆どが合格できる試験になっています。予備試験コースは旧司法試験の性格を少し残していますが、法科大学院コースに引っ張られて易しくなっているようです。予備試験コースの場合司法試験予備校に通う受験生が多く、司法試験予備校の講師は司法試験を高得点で合格した弁護士が多いため、法曹としての基礎知識が整理され洗練された合格者が多く、大手弁護士事務所は予備試験コース合格者を優先的に採用していると言われています。

最近は露骨に「今の司法試験合格者のレベルは酷い」というベテラン弁護士が増えていますが、数字の上からも伺えます。現在の司法試験合格者のレベルは旧司法試験合格者のレベルの3~4割ではないでしょうか。この結果若い弁護士と接した依頼者に失望が広がり(一番の失望は世の中の仕組みが分かっていない事)、法学部の不人気化に繋がります(もう既に不人気化している)。司法試験が文系最高峰の難易度を誇っていたから法学部も文系最高の難関学部でした。今の司法試験は公認会計士試験(出願者数22,056人、合格者数1,636人、2025年合格率7.4%)より易しく、税理士や司法書士レベルになっています。今後司法書士が法科大学院経由で弁護士に転士するケースが増えると予想されます。司法試験の失墜は目を覆うばかりです。