宅建士証は地獄へのパスポート

最近ヤフーニュースで「宅建合格しました」というXへの投稿がいくつか取り上げられました。先週は女子プロゴルファーの比嘉真美子さんの投稿が取り上げられました。比嘉さんはJLPGAで優勝5回を誇る実力派であり、まだまだ現役バリバリです。そんな彼女が昨年宅建を受験して合格していたというのですから驚きです。1年間勉強したと書いていますので、前々年のシーズオフから勉強を始め、シーズン中もコツコツを勉強していたものと思われます。比嘉さんの少し前楽天イーグルスの津留崎投手が宅建に合格したというニュースが出ていましたが、津留崎投手の場合慶応高校、慶大卒ですので、宅建合格の素地があるのは分かります。失礼ながら比嘉さんの場合沖縄本部高校卒であり、高校時代からゴルフで活躍していますので、勉強をする時間は無かったように思われます。宅建は勉強をする素地がないと合格できない(素地さえあれば合格できる)資格であり、比嘉さんのキャリアでの合格はちょっと普通ではありません。ゴルフだけでなく勉強の素質もあったことが伺えます。

私も昨年宅建に合格したのですが、宅地建物取引士(宅建士)に登録するかどうかで悩んだ末、登録しないことに決めました。宅建は試験に合格すれば自動的に宅建士になれる(名乗れる)わけではなく、2年間不動産業で経験を積むか、指定の講習を受ける必要があります。試験に合格する前に不動産業の社員で2年間不動産実務に従事していれば宅建に合格し申請すれば宅建士になれます(宅建士名簿に登録され宅建士証が発行される)。2年間の実務経験がない場合、2日間の講習を受けて修了試験に合格すれば宅建士に登録できます(終了試験はテキスト使用可の簡単な試験でまず落ちることはないと言われている)。私は今後不動産業に従事することは考えておらず宅建士に登録しても意味がないのですが、合格記念に宅建士証を取得するのも悪くないかと考えました。そこで1月の講習会に申し込みました(講習会費20,000円、登録費用約37,500円)。

その後講習会の資料が送られてきたので目を通し、youtubeで宅建士の仕事や不動産に関するトラブルを調べてみたら、不動産取引のトラブルが多いこと(全取引の2割はあるという人がいた)や宅建士の業務がトラブル不可避であることが分かりました。宅建士の最大の業務は、不動産売買や賃貸借契約を結ぶ前買主や借主に重要事項説明書を説明することですが、売買契約後トラブルになったケースを見ると、買主は重要事項説明書に書いてなかった、宅建士が説明しなかった、その結果騙されたと主張することが多いのです。土地の売買でのトラブルでは

・隣との境界が画定していなかった

・土地の中からガラや杭、浄化槽などが出てきた

・水道管や下水管を引き込もうとしたら本管が私道に埋設されており、私道所有者の許可が取れない

・隣地の擁壁が危険なことが分かった

・購入土地の一部を都市計画道路が通ることが分かった

・土砂災害特別警戒区域に追加された

などが後日分かり、これらが重要事項説明書に書かれていなかった場合、裁判になれば仲介した不動産会社と宅建士に落ち度があったと認定されることが多いようです。もちろん損害賠償は宅建士が所属する不動産会社が支払うことになりますが、宅建士も一部負担することになるか、会社に居られなくなると思われます(県や国交省の監督部署に訴えられたら処分される)。ある若手youtuberの宅建士は10回連続トラブルがあったと言っていました。これらのトラブルがないように調べ上げるには、不動産に関するトラブルを知り尽くし、それらを防ぐ調査ノウハウを持ち合わせていることが必要であり、相当の不動産業務経験が必要です。大きな不動産会社なら、不動産物件に関する資料を収集する部署とそれらを審査する部署を分ける、それらの部署に役所の都市計画業務経験者、不動産鑑定士、土地家屋調査士、建築士および弁護士の資格を持つ社員を配置し、これらのチームで問題のない土地であることを確認して重要事項説明書を宅建士に説明させる(あるいは前記資格者が宅建士を兼ねる)ものと思われます。それくらいしないとトラブルは防げません。小さな不動産会社だと不動産の営業マンが宅建士も兼ねていることが多く、重要事項調査や説明より売ることが優先され、売却後トラブルが多くなるのは当然と言えます。また重要事項説明書は説明の当日に買主や借主に渡しその場で説明し署名を求めるため、買主や借主は内容を理解できないまま署名しています。これも説明から署名まで最低1週間は開けるように義務づける必要があります。

こういうことが分かると宅建士はトラブル不可避の職業であり、宅建士証は地獄へのパスポートのように思えてきました。宅建士に登録したら会社で他の社員が作成した重要事項説明書を臨時で説明させられる場合が出てくると考えられますが、絶対にしてはいけません。大トラブルに巻き込まれます。

不動産取引のトラブルの多さを考えると、宅建士試験は、今の内容に不動産鑑定士試験や土地家屋調査士試験の内容を加えたもっと広範囲かつ高度な試験にする必要があります。