木村熊本県知事の「悪だくみ」発言で分かること

熊本県がコロナ禍で実施した旅行割引事業を巡り、2023年9月に県庁職員が県上層部の対応を追及する公益通報(外部通報)をした件は、2024年4月第三者委員会が「不適切受給も見逃し指示も認められなかった」と結論付けました。その結果本件通報は通報者の思い込みによるもとなり、通報者は後日別件のパワハラを理由に懲戒処分を受けました。1月20日本件に関する通報者と木村副知事(当時。現知事)の会話の録音データが公表され、新たな真相が見えてきました。

今回公表された録音データによると、

木村副知事(当時) で、最後にちょっとお礼を言っとかなきゃいかないと思って、いろいろ本当この1年大変だったと思うけど。

通報者 いえいえ…。

木村副知事 僕はあなたに助けられたと思ってるけん。

通報者 ありがとうございます。

木村副知事 はっきり言って、あなたのおかげで、あっちの悪だくみが止まったけん、昨日まで、昨日の報道まで至っているんだと僕は実は思ってる。うーん。いろいろ今も、あってるのは俺も聞いてるけど、あのー、そのー、僕は本当に信じてるし、おかげだと思ってる。なんで、県庁全部敵に回してると思わなくていいからね。

今回で注目すべきは、木村副知事も通報者が問題にした旅行割補助金の不正受給を調査しない(見逃す)よう指示した県幹部の行為を「悪だくみ」と捕らえていたことです。旅行割補助金問題はもう1人の副知事だった田島副知事(県庁プロパー。肥薩線復旧など問題案件担当)の管轄であり、木村副知事には記録の回覧はあったても口出しはできなかったものと考えられます。木村副知事としては「これは良くない」と考えていたことが伺えます。

ここで問題となるのは第三者委員会が田島副知事以下関係幹部しか事情聴取せず、木村副知事や蒲島知事に事情聴取していない点です(報告書に記載がない)。旅行割補助金問題を調査した第三者委員会は2024年4月11日、「補助金支給要件が不適切かつ不明確であったことが原因で生じた問題あり不正受給とすることはできない」から、

  • 県幹部の不正見逃し指示はなかった
  • 県の損害はなかった

という結論の報告書を発表しました。これを聞いて違和感を持った県民は多いと思われます。なぜなら通報者が公表した録音データは明らかに見逃すよう指示したようにしかとれないからです。

旅行割問題は2023年1月18日に熊本日日新聞が報じて明らかになりましたが、その前日の17日に蒲島知事には報告が上がっています。以後蒲島知事みずからが記者会見し経緯や対応を説明しており、蒲島知事関与案件になっていたことが伺えます。従って事あるごとに蒲島知事に報告が上がっていたことは当然です。ところが第三者委員会報告書には蒲島知事に事情聴取した形跡が見られません。関係幹部(田島副知事も名は伏せられている)の証言しか載せられていません。本件は蒲島知事が良く知っていた問題であり、問題の重要性から蒲島知事が指示しないと解決しないことから、蒲島知事の対応が焦点でした。従って蒲島知事への事情聴取は不可欠でした。第三者委員会はこれを意図的に避けています。ここから分かることは、第三者委員会が蒲島知事を守ろうとしたことです。報告書の結論により直接的に救われたのは見逃しを指示した幹部ですが、第三者委員会が本当に守ろうとしたのは蒲島知事です。第三者委員会の委員のうち2名は、2018年に熊本市議会議員の議員資格取り消しが問題となった熊本県の自治紛争処理委員会の委員を務めており、蒲島知事とは顔なじみです。こういう背景が委員任命にも第三者委員会の調査にも影響していると予想されます。

しかし第三者委員会の報告書の結論は妥当です。なぜなら旅行割補助金はコロナで苦しむ旅行業者や飲食店などにお金を落とすことを目的としたものであり、県担当部署の補助金支給要件では目的を果たせないからです。要するに県の担当部署が定めた補助金支給要件が妥当性を欠くものであり、これで旅行業者が不正請求に問われるのは酷というものです。第三者委員会の結論は賢明なものですが、蒲島知事を守る意識があり蒲島知事や木村副知事に事情聴取しなかった点に不備があったと考えられます。

そして本問題で一番非難されるべきは木村知事です。理由は、

  • 旅行割問題は担当部署が補助金の目的を理解せず複雑な補助金支給条件を設定したことおよび説明が不十分だったことに原因があるにも関わらず、旅行業者が悪いと考えていること(田島副知事以下関与幹部の見逃し指示は悪いが、支給した補助金は返還させないという結論は妥当)、
  • その結果木村知事は、知事就任後第三者委員会の結論(旅行業者の補助金受給に不正は無かった)に従わず、返還させた補助金を旅行業者に返還しなかったこと、

です。木村知事は知事就任後県民が呆れる発言を続けていますが、これは常識的理解力の欠如(能力不足)に基づくものであり、今回の「悪だくみ」発言もその表れです。木村知事は熊本県知事としての能力を欠いています。