ホンダ、ワイガヤ経営の悲劇

3月12日ホンダは、2026年3月の最終損益が最大6,900億円の赤字に転落し、2027年3月期までに最大2兆5,000億円の損失を計上する見通しと発表しました。

今期については、電気自動車(EV)の見込み違いによりEV関連の投資資産を約1兆3,000億円減損処理することが大きな原因としていますが、自動車部門の営業利益が最大5,700億円の赤字の予想であることから(減損は特別損失として処理)、原因はホンダ車全体の販売不振にあることが分かります。ホンダは三部社長になって2040年までにEVを中心とした新燃料車に100%切り替えるとしてエンジン車の開発を中止しましたので、その影響がもろに出たと言えます。

三部社長になってからホンダは浅はかな意思決定を続けており、この赤字は三部社長の経営者としての評価を表すものです。EVシフト失敗以外にもGMとの提携の破談、日産との経営統合の破談があり、三部社長が決めた戦略はことごとく失敗しています。GMとの提携について言えば、GMは官僚的な会社でありベンチャー的なカルチャーを有するホンダとは親和性が有りませんでしたし、日産との統合についても日産も官僚的な会社であると言う点ではGMと重なっていました。日産との統合交渉では、最初に両社の社長で国交省を訪問したことから国交省の要請に基づくことが伺え、そのため交渉開始後程なくホンダが日産に子会社化を提案するなど調整不足が明らかでした。更に統合交渉入りが日経で報道されホンダの株価が急落したことから、約1兆1,000億円の自社株買いを発表しました。両社の統合交渉については自動車業界でも上手く行かないという声が多数あり、その中で1兆1,000億円の自社株買いを行うのはリスリーでした。普通統合が合意に達してから行います。案の定この3か月後には統合交渉は破談となり、1兆1,000億円をドブに捨てることとなりました。

これ以外でもおかしな経営判断が見られます。例えば2023年9月に青山本社ビルの建替えを発表しましたが、昨年8月これを中止し本社は八重洲(他社新築ビルに自社土地持ち分に応じたフロアを取得)に移転すると発表しました。多くのメーカーが本社を主力工場所在地に移転する中で、ホンダの本社が青山や八重洲にある必要は無く、和光工場内に移転するのがベストでした。今年の2月にはホンダがラピダスへの出資を決めたと報道されましたが、ラピダスが生産を目指すのは2nm半導体であり、自動車には使いません。自動車メーカーではトヨタがラピダスの創業株主8社のうちの1社となっていますが、これは経産省からの要請を断れなったためであり、トヨタは創業株主として振る舞っていません。こんな中ホンダが出資をするに至ったのは、ホンダの三部社長が自工会副会長であることから、経産省の要請を体面上断れなかったものと思われます。

これらから分かることは三部社長に経営者としての資質がないこととそれを補完する経営チームが機能していないということです。ホンダは役員が個室を持たず、大部屋に机をおいて何か問題があるとみんなでワイワイガヤガヤ(ワイガヤ)議論することを伝統としてきましたが、その結果社長はワイガヤガの中心にいる人物、即ち役員の中で一番人気者がある役員がなるようになったものと思われます。これは学校で人気者が学級委員長に選ばれるのと同じシステムです。この結果実績や能力に基づかない社長が就任することになります。三部社長はホンダ技術研究所での勤務長く、ここはチーム開発が多く、個人が実績を上げられる部署ではありません。従って三部社長は実績を上げて社長になった人ではないことは明らかです。そんな社長が気の合うワイガヤ仲間で経営チームを組みますから、意思決定が軽薄になるのは当然です。こう考えると三部社長の下で数々の経営判断ミスが繰り返えされる原因が分かります。

ホンダが2027年3月期まで約2兆5,000億円の損失を計上する可能性があることを明らかにしたことについてヤフコメでは、「減損中心であり資金流出を伴うものではないから経営への影響はない(軽微)」とのコメントが見受けられますが、とんでもありません。2兆5,000億円は設備投資や開発費用として支出されており、それが回収できなくなったことを意味しており、影響は重大と言えます。

今回の巨額赤字を受けて三部社長と貝原副社長は月額報酬の30%を3カ月減額すると発表しましたが、これでツートップの無責任ぶりが明かとなりました。2人にとって約2兆5,000億円の損失はこの程度の責任となるようです。

ホンダがこの底なし沼状態を脱するためには経営体制の刷新が必要です。三部社長は2021年4月に社長に就任していますので、6年目が終了する2027年3月期に巨額の損失を処理して交代する考えのようですが、ここは速やかに辞任し新しい経営体制で再建に踏み出すことがホンダのためです。

現在のホンダは、二輪車部門が世界最強の存在として経営を支えていますが、インドや東南アジアなどでは二輪車の電動化が進み、現地資本や中国勢の安価な電動二輪車に押されシェアを落としています。ホンダの四輪部門の赤字が続けば経営を支えている二輪部門も弱体化します。ホンダは存続の瀬戸際に立っています。