地方の役所には「業務改善室」が必要

福岡に来る前、高校を卒業するまで育った熊本にある故郷に約1年居ました。30年以上ぶりの故郷生活でした。そこで知ったのは、故郷の役所の業務のやり方があまりに遅れていることでした。一番驚いたのが、選挙の投票案内のハガキです。その年は参議院選挙があったのですが、ハガキには投票所として「**公民館」と公民館名だけしか書いてありませんでした。長く住んでいた東京では、案内ハガキには投票所名はもちろん、投票所の住所、さらに簡単な案内図まで書いてありました。従って、新しく引っ越して来た人でも問題なく投票所に行くことが出来ました。また、東京都内の場合、区内の詳細地図も販売されており、ネットの地図でも細かい所まで書かれていますから、投票所名だけでも調べれば分かります。ところが田舎の場合、市販の地図は大まかで市役所や学校など重要な所しか表記されていません。公民館レベルは、表記されていないことが多いのです。私が住んでいた所の公民館も地図には載っていませんでした。何か催し物があっていれば、所在地やアクセス方法が載っているかもと思い、ネットで調べて見ました。2件ヒットしましたが、古い記事で所在地などは書いてありませんでした。やはり小さな公民館だと思われました。ならば幹線道路沿いにあるだろうと思い、自転車で探し回りましたが、見つかりませんでした。選挙管理委員会に電話すれば済むのでしょうが、こんな投票案内をよこした選挙管理委員会には電話する気がしませんでした。古くから住んでいる人が大部分を占める地域では、この表記でも良いのでしょうが、私が住んでいた地域は、広い埋め立て地があり、県の出先機関の職員や仕事で派遣されて来ている人、周辺の地域から勤めに来ている人など向けのマンションやアパートが多い地域でした。その人たちは、私と同じように公民館の場所が分からない状態だったと思います。もう投票に行くのは止めたと思っていたとき、別件でネットのヤフー地図を見ていたら、なんとその公民館が記載されていたのです。そこは、幹線道路と広場になっている埋め立て地に挟まれた古い住宅街でした。家が20,30件密集し、新しい住民は先ず行くことはない場所です。自転車で行ってみると、古い住宅が並んだ中に、車を4,5台止められる広場がついた一般住宅のような外観の建物があり、そこが公民館でした。

この投票案内を見たら、誰だって「住所くらいは書いておかないと」と思うと思います。戦後民主的な選挙が始まってからずっとこのフォームでやってきたのでしょう。ここの役所の職員は、ほとんどが地元出身者であり、他所のやり方を知らず、役所に入ったら先輩から仕事を習い、その通り踏襲してきたのはないでしょうか。その他にもこのやり方はどうかな、ということがいくつかありました。そこは今の日本の例外に漏れず人口減少が激しい地域です。ここの役所の業務のやり方を見ると、衰退は必然だと思いました。多分、これはこの町だけのことではなく、日本の多くの地方の自治体に共通することではないでしょうか。東京や横浜の進んだ自治体の業務のやり方を真似れば済むことなのですが。

役所の職員には、業務改善を労働強化と考えている人が多いように思います。業務改善しない限り収入は増えず、給料が上がらない民間企業と違い、役所の職員は、給料は税金で確保され、身分保障もされているから、業務改善をする動機がありません。その結果、古くからの業務のやり方を続けることになります。地方における役所は、地方経済を活性化する上で重要な存在です。地方の役所は常に日本の先端の役所の業務のやり方を取り入れなければなりません。これを怠り、何十年も前の業務のやり方を続けていたら、その地方は衰退すること必然です。脱皮できない蛇は死ぬと言いますが、業務改善できない役所のある地方は滅ぶと言ってよいと思います。

地方の役所には、業務改善室を置き、職員から業務改善の提案を集めるとともに、進んだ都会の役所からOBなどを招き、業務改善を進めるべきだと思います。そして職員からの業務改善の提案は、人事評価に反映します。素晴らしい提案をした職員には賞与を増額し、人事考課で加点します。特に管理職への登用に当たっては、業務改善の提案実績と実行力を重視します。そうすれば、民間企業並みの業務水準となります。それが地方全体に好影響を与え、衰退防止に繋がります。地方が消滅したくなかったら、先ずやるべきことだと思います。