京都の強みは歴史軸があること
10月3日森記念財団都市戦略研究所が実施した日本国内の都市ランキングで、京都がトップだったとの報道がありました。これは、日本の72都市について、統計資料に基づく83指標の定量データと居住者へのアンケートに基づいて、「経済・ビジネス」「研究・開発」「文化・交流」「生活・居住」「環境」「交通・アクセス」という6分野のスコアを算出し、合算して順位を付けたものだそうです。その結果京都市は、「文化・交流」1位、「研究・開発」2位、交通・アクセス8位、経済・ビジネス9位、生活・住居33位、環境52位で、トータルスコア1,270で総合1位となっています(2位福岡市1,155、3位大阪市1,132)。
京都市の最大の得点源は「文化・交流」で、スコア390と他都市を引き離しています(大阪市276、福岡市249)。これはだれでも納得するところです。少し驚かされるのが「研究・開発」の2位(103)です。評価の高い大学数と論文投稿数が多いのが要因ということです。実際にも日本電産、京セラ、村田製作所、島津製作所など世界的な研究開発型企業が多いことをみれば納得できます。ちなみに1位は名古屋市(106)です。名古屋市の場合、トヨタの存在がスコアを引き上げていると思われます。
「文化・交流」分野と「研究・開発」分野が強いことから分かるように、京都市にはこれらから派生するしっかりした雇用の場があります。具体的には観光と大学・企業の研究・開発に関する仕事です。その結果、「経済・ビジネス」も8位と上位に来ています。「交通・アクセス」も鉄道による市外からのアクセスが良く、9位と上位にきています。ただし、市内の交通の便は最悪で、八坂神社から清水寺を経て京都駅にいくバス便など満員で、途中乗れないことが多いのを見ると、トータルではもっと下のような気がします。環境では、リサイクル率や自然エネルギーの自給率の低さなどが原因で下位になっていますが、見た目には自然豊かな良い環境に見え、もっと上位に来ても良いように思います。
このように都市研究の面から見て、京都市は最も魅力的な都市と認定されました。京都市の特徴は、長い歴史がある寺社・仏閣など歴史遺産を保存・維持してきていることであり、強みもこのことから生まれています。京都市には歴史遺産に裏打ちされた時間軸(歴史軸)があります。これがある限り、一時的な流行やまがい物に惑わされることはありません。本物を追求する態度が生まれ、更に悠久の社会を生み出します。京都市は日本の歴史を凝縮した唯一無二の都市ということができます。
(京大からノーベル賞受賞者が輩出するのも、京都市のこういう環境が関係しています。前のブログ「科学技術系VBの勃興が期待できる京都!」も参考に。)