医学部入試、何が不適切?

10月23日、文部科学省は医学部入試調査結果の中間報告を発表しました。それによると、6大学で「不適切な入試の可能性が高い」ということです。「不適切な可能性が高い事案」として(1)学力検査での得点が同等でも、面接試験で女性や浪人回数の多い受験生を不利に扱った(2)調査書や出願時の書類評価で現役生にだけ加点し、多浪生と差をつけた(3)合格圏外の同窓生の子どもらを合格させた(4)補欠合格者への繰り上げ合格の連絡を得点順ではなく、下位の特定の受験者へ先にした――の4事例を示しています。

この報告では、これまで使っていた入試「不正」という言葉に代えて「不適切」という言葉を使っています。文部科学省もやっと現実が分かってきたようです。「不適切な事案の可能性が高い事案」として挙げた4つの事例のうち、本当に不適切なものは(3)のみです。(1)については、個別の大学がどういう選抜基準を設けるかの問題です。その大学が医療現場のニーズや国家試験の合格率などから男子や浪人回数が少ない受験生を優先することは、その大学が独自に決めることです。そのために、2次試験や面接試験があります。現在多くの大学では、学力選抜以外にAO入試や学校推薦、自己推薦による選抜者の割合を増やしています。東大や京大でもそうです。特に私大では、内部進学や推薦入学による入学者が全入学者の過半数を超えているところが大多数です。これは、学力試験より志願者の特技や特殊能力を重視し、大学卒業後社会で活躍できる学生を優先的に入学させようとしているからです。一般入学試験による入学者は、何の取柄もなく推薦入学がかなわない人になっています。

医学部入試は、医師の採用試験の要素が強いため、学力としては医師国家試験に合格できる程度あればよく、患者とのコミュニケーション能力や医療スタッフとの協調性、激務に耐えられる体力などの要素が重要になります。従って、これらを評価する2次試験の内容や面接が重要となります。この2次試験の内容については、各大学の自主性に委ねられるべきであり、文部科学省が学力主義や男女平等、現役浪人平等などの価値観を押し付けるべきではありません。

医学部の中には、東京女子医大のように男子には門戸を閉ざし、男女平等に反する大学もあります。また私立の総合大学の医学部は、入学者の2割以上を系列の付属高校から無試験で入学させています。男女平等や学力主義を言うのなら、こちらの方が明らかにより大きな問題です。こちらは問題にしないとすれば、これらの大学および医学部は、これらの基準を明示しているからという理由しかありません。よって、現在文部科学省や新聞が不適切と言っている医学部の選抜方法についても、各大学が募集要項などで選抜基準を明示すれば何ら問題ないことです。

不正が相次いでいる文部科学省が医学部入試問題を追及する姿こそ不適切です。