才能伸長教育に舵を切る必要がある

全国の公立高校の定員割れが4割に上るとの報道がありました。これは人口減少が最大の理由ですが、日本の教育制度が今の時代のニーズに合っていないことも原因の1つだと思います。

例えば、高校進学前の段階である国立・私立中学(以下私立中学)への進学者は、1990年の23.8万人から2016年には27.2万人へ増えています。学校数も647校から849校へ増加しています。私立中学と言っても高校までの一貫教育体制が殆どなので、私立高校においても同じ傾向になります。地方ではまだ公立中学進学が普通ですが、東京都では4人に1人は私立中学に進学しており、都市部での一般的な傾向です。これは大学進学を考えると、中高一貫で進学教育に力を入れている私立中学や大学までの進学が約束された私立中学に進学するのが圧倒的に有利だからです。それに公立中学の教育は、生徒個々の学力や能力の差異から目をそらし、全員を同列において授業を行います。その結果、授業のレベルを学力が真ん中くらいの生徒に合わせますから、それよりレベルの高い生徒の学力が伸びるわけがありません。それに公立中学校のやり方は、生徒の才能、長所を伸ばすより、弱点、不得意を失くすことに重点を置いています。この弊害を突いて伸びているのが私立中学進学です。進学に力を入れる私立中学に進学すれば、勉強が好きで、学力が優秀な者が集まり、教育内容もそれに合わせた高度なものが用意されているわけですから、生徒や親のニーズに合致します。だから伸びるのは当たり前です。もし学費が高いという問題がなければ、私立中学への進学率はもっと高くなります。全国平均で20%くらいになると思います。それは、学力が高いことを才能、長所とする生徒が20%程度いるからです。私立中学への進学は、学力やスポーツなどに才能、長所がある生徒を伸ばそうと考えたら当然出て来る選択です。最近は、サッカーや卓球などの才能のある生徒を選抜し、中学段階からアカデミーで英才教育することも行われています。音楽なども中学から音楽の特別コースに進学しないと才能は伸ばせません。このように、中学からは、生徒の才能や長所を伸ばす学校に進む必要があります。才能や長所を伸ばす教育は、公立中学・高校より私立中学・高校が向いています。私立なら優秀な教員を高い報酬で集められます。公立の場合、公務員制度が邪魔になります。

私立中学・高校の理想は、例えば大阪桐蔭のように、野球が得意な人には野球を伸ばせる環境を、勉強が得意な生徒には学力を伸ばせる環境を用意するなど、学校内で生徒の伸ばしたい才能に応じたクラスを用意することです。こういう私立中学・高校が今後ますます必要とされると思います。

今の日本の停滞は、均質化教育、底上げ教育に重点を置いてきた結果、個人が生まれ持つ才能や長所が十分に伸ばし切れていないことに原因があります。突出した能力の持ち主が少なく、この点で他国の人財に負けている結果です。今後は、欠点、不得手には目をつぶり、個々人が生まれ持った才能、長所を徹底的に伸ばす教育に舵を切る必要があると思われます。人は欠点や不得手を矯正しても生きる力にはなりません。才能や長所を伸ばせば、途轍もないことが出来ますし、困難にも耐えられます。今後日本が世界に伍していくため、また個人が生き延びるためには、これしかありません。このため、私立中・高校までの学費は無償にすべきで、これは大学無償化より優先します。