ゴーン逮捕事件の実体は、日産の内紛

日産のカルロス・ゴーンが突然逮捕されましたが、この逮捕に釈然としていない人も多いと思います。東京地検の逮捕理由は、有価証券報告書に役員報酬を虚偽記載した金融商品取引法違反ですが、そんなことで国際的に著名な外国人の経営者を逮捕するのは、考えられません。有価証券報告書の虚偽記載と言えば、東芝でもありました。こちらは巨額の粉飾決算で、会社や投資家に与えた損害が大きく、悪質でした。しかし、この2社では、経営者は逮捕されていません。

ゴーンの場合、役員報酬が虚偽記載だったと言っても、実際の報酬総額は年間20億円程度であって、国際的に見て過剰とは言えません。虚偽記載だったとしても、貰っていい報酬を少なく記載しただけで、会社から騙し取ったわけではありません。貰っていて記載しなかったとすると、税務申告もしていないと思われ、巨額の脱税となり、刑事罰の対象となります。記載しなかった年間10億円については、退任後受け取る契約を結んでいたとの報道もありますが、そうであれば問題ないと考えられます。メジャーリーグでも10年間で300億円の契約を結び、これを20年間に分割して支払うような契約があります。所得税はちゃんと支払われので、脱税にはなりません。ただし、有価証券報告書には記載する必要があると思われます。

このように見てくると、ゴーンは、株主や投資家に大きな損害は与えておらず、株主や投資家保護のためにある有価証券報告書虚偽記載では重罪には問えないことになります。脱税があったとしても、見解の相違で修正申告か、重加算税処分に留まり、税務調査も待たずいきなり逮捕するような内容ではないと考えられます。

これが何故逮捕に至ったのか?それは、日産の役員から特別背任の告発(相談)があったからだと考えられます。有価証券報告書の役員報酬虚偽記載については、SAR(ストック・アプリエーション・ライト)につき何度か証券取引等委員会から訂正するよう指摘があったが、ゴーンが拒否してきたとの報道です。だとすれば、再度指摘があり、今回は証券取引等監視委員会の態度が厳しかったため、担当部署が監査役に報告したのでしょう。報告を聞いた監査役が調査に乗り出したところ、ゴーンの報酬に関する危ない仕組みを知る所となったのでしょう。証券取引等監視委員会から告発され刑事事件となったら、監査役は刑事および民事の責任を追及されること必須です。そこで監査役全員で協議したところ、今の日産の取締役会に挙げてもゴーン一派に握りつぶされると考えて、西川社長など一部の日本人取締役および顧問弁護士と相談し、特別背任で東京地検に相談することとなったと思われます。

このように今回のゴーン事件は、日産内部で問題を処理できないと見た監査役全員と西川社長ら一部の取締役が解決を検察に委ねたものと思われます。端的に言えばゴーン一派と日本人の監査役および取締役との内紛です。通常の会社なら会社内部で処理し、経営者逮捕まで至らない事件です。一企業の内紛にしゃしゃり出た検察の対応には問題があるように思われます。