逮捕されるかどうかは検察の匙加減次第?

カルロス・ゴーン(以下ゴーン)逮捕で明らかになったのは、日本の検察の危なさです。森友事件、東芝粉飾決算、そして今回のゴーン逮捕事件とを考えると、扱いが明らかに不公平で、ぶれが大きいのです。

森友事件は、明らかに虚偽公文書作成罪に該当する事件でした。大量の公文書を書き換えて事実を隠蔽し、国会などの判断を誤らせようとしたのですから、罰するに値します。これを大阪地検は、関係者を誰も逮捕せず、全員不起訴としました。不起訴しない代わりに、改ざんした書類を全部明らかにし、職務違反で処分することで、政府と妥協が成立したのでしょう。しかし、これは明らかに不当な司法の在り方であり、検察審査会で不起訴不当の判断が示されるはずです。

今回のゴーン逮捕との比較で言えば、東芝事件が対照になります。数千億円に上る粉飾決算を行い、東芝を倒産の瀬戸際まで追い込んだ事件です。有価証券報告書に虚偽の決算内容を掲載し、投資家や債権者に対して重大な損害を与えました。その結果多くの訴訟が提起され、東芝や経営陣は多額の賠償が求められています。それに対しゴーン事件は、国際的には妥当な報酬を有価証券報告書に記載しなっただけであり、実質的に日産は損害を被っていませんし、投資家や債権者が大きな損害を被るような金額でもありません。従って、東芝事件より遥かに軽微な事件なのです。それを、いきなりゴーンを逮捕しました。背任や横領、脱税の疑いがあったとしても、日産からの告発や国税からの告発を待って調査に着手し、逮捕するのが常識です。

今回のゴーン逮捕は、常識に反した異常な逮捕であることは間違いありません。ゴーンやケリー容疑者が日本に殆どおらず、この機会を逃すと逮捕が難しかったとしても、刑事手続きには正当な手続きが求められます。あきらかにこれを欠いています。

今回のゴーン逮捕の背景には、最近制定された司法取引制度を使うには格好の事件という背景があったと想像されます。検察は、長年要望してやっと実現した司法取引制度を、注目度の高い事件で使いたかったのです。

しかし、今回のゴーン逮捕は、日本の検察の不安定さを目立たたせる結果となりました。逮捕されるか、起訴されるかは、客観的基準ではなく、検察の匙加減一つであることが分かり、いつ犯罪人とされかわからないと感じた人は少なくないと思います。

国際的には、日本は遅れた司法制度の国という印象を強めました。検察に対する検察審査会のチェック機能を高める必要があると思います