ゴーン事件、攻守逆転が始まる

ゴーン逮捕から3カ月以上が経過します。ゴーン事件は、単なる社内問題に東京地検特捜部が介入すると言う前代未聞の事件です。多くの大企業の経営者は、驚愕していると思います。なぜなら、大企業ではどこでもゴーン事件のような社内問題の1つや2つはあるからです。社内の反対勢力が司法取引と称して検察に駆け込み、経営者がゴーン容疑者のように逮捕される可能性が出てきたからです。そして、逮捕されたら証拠隠滅の恐れと称して、検察の主張に同意しない限り釈放されないかことが分かりました。日本の司法は、近代的な民主主義国家とは程遠いことが分かりました。このように、ゴーン事件は、多くの経営者にとって他人事ではないのです。

ここまでに、検察や日産からと思われるゴーン容疑者に不利な情報が多数報道されていますが、どれも逮捕を正当化するものはありません。むしろ不当逮捕を決定付けるものばかりです。2月初めの日産の第三四半期決算報告で、決算書にゴーン容疑者への未払い報酬として約92億円を計上したとの報告がありましたが、これは発生するかもしれないことから保守的に計上したと説明されていますので、検察が有価証券報告書に記載しなかったというゴーン容疑者の報酬は、ゴーン容疑者らが言うように、確定していなかったことを証明しています。従って、ゴーン容疑者を逮捕した有価証券報告書虚偽記載の罪は成立しないこととなります。そしてそもそも有価証券報告書虚偽記載の罪という形式犯で、日産の再建に貢献した世界的経営者を逮捕するものではありません。これは別件逮捕で、逮捕の本丸と言われる特別背任罪についても、日産の社内調査により事実なら弁済させれば良いことであり、金額的にもゴーン容疑者が弁済できる額です。このように社内で解決し、検察が介入する話ではなかったのです。検察が介入した理由は、ただ1つ、できたばかりの司法取引制度を使って華々しい成果を上げたかったからです。

このように今回のゴーン事件は、ゴーン容疑者の公私混同、強欲という非難されるべき内容はあっても、刑事罰に問われる内容の事件ではありません。従って、日本の裁判所が検察に従属していなければ、無罪と判決するのが当然の内容です。拘留期間が3カ月を超えることから、世界の人権団体の批判もあり、ゴーン容疑者は、3月中には釈放される可能性が高いと思われます。その後は、ゴーン容疑者が自分を犯罪人に仕立てようとした日産の取締役および監査役に対して損害賠償などの民事責任を追及することとなります。また、ルノーとしては、日産の取締役をルノー側から過半数出す議案を株主総会に提出することとなります。そしてこの議案は間違いなく可決されます。このように3月以降、ゴーン事件の攻守は逆転することになります。