日本最強の事業会社は商社
ある調査で、今年の大学生の就職人気企業第1位に伊藤忠商事が選ばれたという報道です。大学生の企業調査力も向上してきたという気がします。私も長い間会社勤めをしましたが、私の印象では日本における最強の事業会社は商社です。商社は、これまで銀行や生保、損保などの国の保護監督下にある超安定、高給企業の陰に隠れて目立たない実力企業でしたが、銀行や生損保が低金利や人口減少の影響から、今後収益が減少することが予想され始めたことから、一挙に人気トップに浮上した感じがします。
商社の場合、収益は銀行のように日銀などの政策に影響を受けることは少なく、自らの努力で決定できます。そして、日本の人口は減少していますが、日本メーカーの輸出や事業会社の輸入の割合が増加しているため、その仲介機能を持つ商社の取扱高は上昇しています。また、海外の原料や農産物などの集荷、輸入については、絶対的なノウハウを持つため、これらの物流、商流には欠かせない存在となっています。その結果、商社なしでは日本の経済は回らない状況と言ってよいと思われます。商社の場合、一般的には口銭3%と言われ、金融商品で5%,10%と言った利幅のものがある中で、暴利を得ていると言う感じではありません。しかし、口銭が安い分取扱高が多い必要があり、1商品の取扱高が数千億円や数兆円となるものが中心となります。一旦物流や商流のシステムが確立してしまえば、美味しいビジネスということが出来ますが、最初のシステム作りが大変なようです。商社が介在するビジネスとしては、原油や鉄鉱石、大豆などの海外からの輸入などが浮かびますが、国内でも食品や鉄鋼など多くの商品流通に商社が関わっています。国内のコンビニでもローソンが三菱商事、ファミリーマートが伊藤忠商事の傘下にあることで分かるように、最近では、小売りの部分まで抑えて来ています。最近伊藤忠商事がデサントにTOBを掛けましたが、これもその流れの一環であり、この流れはもっと広がると思われます。将来は、物の売買については、仕入れから小売りまで商社の資本系列企業で行われる例が増えると思われます。
このように商社は、日本最強の事業会社の地位を強めると予想されますので、学生の就職人気第1位も頷ける結果です。しかし、いざ就職する会社としては、相応しい学生は相当限定されてきます。商社の仕事は、一言で言うと格闘技と考えた方がよいと思います。体力があり、メンタルが強く、かつビジネスに必要な知識や技術を速やかに吸収できる柔軟な頭脳の持ち主でないと務まらないと思います。難関大学に一般入試で合格し、有名スポーツ部でレギュラーを張ったような人が適合します。その中でもラグビー部が最適でしょうか。単なる受験秀才は務まりません。
今後学生の人気の就職先は、外資系コンサルタント会社と商社になると思います。外資系コンサルタント会社に行くのは、東大や京大の頭脳優秀で、将来自ら起業したい考える人です。外資系のコンサル会社で事業の実体を勉強し、その後自ら起業し、IPOによって大金を得るコースです。一方、頭脳も上位で体力にも自信のある学生は、商社に進むのが花形コースになると思います。中央官庁や銀行は時代遅れの職業になります。