金融緩和でも利上げは必然

日銀が4月17日発表した金融システムリポートでは、約6割の地方銀行が10年後の2028年度に最終赤字になるとの試算です。人口減と低成長に伴う資金需要の先細りで貸し出しの伸びが鈍り、銀行間の競争が激しくなって、利ざやの縮小も続くのが原因だそうです。

金融庁の試算によれば、既に地銀の半分にあたる54行が本業赤字で、東北や九州などの23県は1行独占でも不採算ということですから、日銀の試算より早いペースで悪化すると見た方がよいと思います。その対策として合併を考えているようですが、1行独占でも不採算な県が23もあるのだから、合併は真の解決策ではありません。真の解決策は、銀行が存続可能な利ザヤの確保、即ち金融緩和に関わらず「コスト+経営可能な利ザヤ」以下での貸し出しは行わないことです。そんなことをしたら他行に取られてしまうと考えるかもしれませんが、他行もそれではやっていけないのだから、それはやらなくなります。やって行けない金利で貸すなどありえないのです。

それでもそこまで追い詰められていない銀行が多いでしょうから、先ずは地方では1県1行体制とし、そして「資金コスト+経営可能な利ザヤ」以下での貸し出しは行わないという慣行に移行すると思われます。先ずは既に本業赤字の銀行がある県で合併による1行体制への移行を急ぎ、合併後は「資金コスト+経営可能な利ザヤ」以下での貸し出しは行わないことにします。そうすれば、銀行経営は成り立ちます。銀行が無くなれば、地域金融が成り立たなくなるわけだから、独占禁止法の問題ではありません。

それでも人口減少、産業活動の縮小、借入を必要としない企業の増加などにより、貸出総額は減少しますので、貸出以外の収益確保が必須です。それはキャッシュレス決済の手数料になると思われます。キャッシュレス決済の手段としては、QR方式やクレジットカード、私鉄系カードなど乱立していますが、最後には使い勝手がよく、手数料が一番安い方式が勝ち残ると考えられます。それは銀行のQRコード決済システムやデビットカードになると予想します。なぜならば、だれでも必ず銀行に口座を持っていますから、銀行間のネットワークを接続すれば一番安全にキャッシュレス決済できるからです。手数料も一番安く1%以下に設定できると思います。この手数料は貸し出しのような貸倒リスクもなく、収入も安定しているので、銀行にとっては魅力的な収益源となります。

この2つのことがあれば、とりあえず1県1行体制を維持できると思われます。このことから、今後はこれまでと異なり金融の量的緩和により下がるのは預金金利だけで、銀行の貸出金利は上昇するという現象が見られることになると思われます。