携帯3社と綿密に協議した総務省令案
6月18日総務省が電気通信事業者法改正案を実施するための総務省令案を有識者審議会に諮り了承を得たという報道です。改正案のポイントは、携帯電話の2年縛り契約の解約違約金を9,500円から1,000円に引き下げることと、2年縛り契約と2年縛りのない契約の料金差を月170円以内しか認めないことです。その結果、2年縛り契約の魅力が低下し、2年縛りのない契約が増え、安い料金の会社への乗り換えが進むと言われています。特にこの秋から新規参入する楽天は、安い料金を打ち出すことが予想されており、楽天が契約者を増やす助けになると言われています。
果たしてそうでしょうか?既に携帯電話ユーザーの殆どはドコモ、KDDI、ソフトバンクの携帯3社に2年縛り契約で囲い込まれており、解約違約金の9,500円から1,000円への引き下げは、既存の契約者には適用されないと考えられるため、この効果が全面的に表れるのは、既存の2年縛り契約終了後となります。従って、楽天が安い料金を打ち出しても、楽天への乗り換えは徐々にしか進まないと考えられます。この結果、今期の携帯3社の業績には殆ど影響しないことになり、家計の携帯料金の支出も殆ど減らず、この秋に実施される予定の消費税2%引き上げの助けにはならないこととなります
この改正の奇妙な点は、解約違約金9,500円を1,000円に引き下げる根拠について、有識者会議のメンバーから根拠薄弱と批判され、それなら一層2年縛り契約を禁止すべきという一歩進んだ意見が出たにも関わらず、総務省はこの意見を採用しなかったことです。これは総務省に違約金を9,500円から1,000円に引き下げてでも2年縛り契約を維持しなければならない事情があったからと考えられます。今回の総務省省令案から、携帯3社が打ち出してくるプランを予想すれば、総務省のこの事情が見えてきます。今回の決定は、携帯3社に厳しそうに見えて、実は携帯3社の業績には殆ど影響を与えないようになっていることが分かります。この決定の結果、携帯3社は、現在の2年縛り契約の料金(例えば月2,980円)を縛りのない料金とし、2年縛り契約の料金を170円安い月2,810円に設定してくることが考えられます。その結果、2年縛りのない契約の料金は月4,480円(2,980円+1,500円)から月2,980円に約35%値下げしたとアピールできます。そして2年縛りのない契約が多くなって行きますが、実は携帯3社の収入で見たら変わらないのです。同じ料金の2年縛り契約から2年縛りのない契約に替っただけです。これから、今回の総務省令の改正は事前に総務省と携帯3社が綿密に打ち合わせとシュミレーションを行い決定したことが伺われます。その証拠して携帯3社からの不満は何も聞こえてきません。このように総務省と携帯3社の協議の中で、業績に影響が少ない解約違約金は9,500円から1,000円に下げるけれども、今後工夫すれば顧客囲い込みに効果的な2年縛り契約は残すことで妥協が成立したものと思われます。従って、今後2年縛り契約を使った新しい囲い込みプランが続々と登場するはずです。
このようにあくまでも総務省は携帯3社の味方なのです。家計は騙されないようにする必要があります。家計は「携帯料金値下げ党」を立ち上げて、携帯3社の営業利益率約20%が同じ公益企業である電力会社並みの約5%になるまで、料金値下げを迫る必要があります。既存の政党やマスコミは、携帯3社から有り余る資金が流れており、料金値下げの抵抗勢力化しています。携帯3社の営業利益率20%を許せば、次は同じ公益企業である電力会社ばかりでなく、ガス会社や鉄道会社も営業利益率20%を目指すことになります。公益企業の場合、生活に不可欠な事業の性格上、これの達成は容易です。携帯3社と同じことをすればよいのです。その結果、家計負担は10兆円以上増加します。携帯料金をこのまま放置するということは、こういうことを意味しています。即ち、将来家計が破綻することを意味しているのです。
総務省がこのことを理解しているのなら、菅官房長官が述べた携帯料金の4割値下げは、家計の携帯料金支出を5兆円(携帯3社の年間営業収入約13兆円×0.4)減らすことであると認識し、もっと徹底した値下げ策を講じる必要がります。最も簡単な方法は、認可料金に戻すことです。公共料金でありながら認可料金制を撤廃したことが間違いだったのです。