日産・ルノー、統合への道筋が立った
6月7日にルノーが突然6月25日開催の日産株主総会で指名委員会等委員会設置会社への移行を定める議案について棄権することを表明し、混乱した日産・ルノーの関係も、6月20日ルノーが一転賛成することを表明し、収束したようです。
報道によると、この件を巡る日産とルノーの交渉で、当初指名委員会の副議長をスナール会長が勤めるだけだったルノー側のポストとして、監査委員会にボレロCEOが入ることで決着したとなっています。
果たしてそうでしょうか?委員会制度設置会社への移行を認めることは、日産のルノーからの独立性を強めることを意味し、統合を急ぐルノー、とりわけ強硬派であるフランス政府として賛成できるはずがありません。これは監査委員会にボレロCEOが参加できることになってもなんら変わりません。従って、ルノーが賛成に回る条件を満たしていないことになります。ルノーが賛成に回ったのは、これ以外のことがあったからと見る必要がります。それは、日産・ルノーの統合の道筋が立ったからです。
本件の交渉は、日産とルノーの交渉の外側で、日本政府(経済産業省)とフランス政府の交渉が行われていたと見るべきです。それは、ルノーとFCAの統合にフランス政府が日産の同意を取るよう言い出したのは、日本政府からフランス政府にルノーと日産との関係を重視して欲しいとの要請があったからという報道や、25、26日に来日するマクロン大統領は安倍首相とルノー・日産問題について話し合うとフランス政府が発表していることからも分かります。ルノー・日産問題は民間企業の問題と逃げていた日本政府が前面に出てきていることが分かります。それは、ゴーン逮捕後日産の業績が急激に悪化し、このままでは大規模なリストラが必要となり、国内の雇用問題に発展することを心配しているからです。日本政府としても日産の日本人経営陣では、業容が拡大した今の日産の経営は難しいことが分かってきたと思われます。そうなると、国内の雇用を減らさないことを条件に、日産・ルノーの統合を急いだ方が良いことになります。
こういう方向で日本政府とフランス政府の間でコンセンサスができ、それは委員会制度設置会社移行後も変わらないことになったのです。そのことは経済産業省出身の取締役が承知しているし、過半を占める社外取締役の多くが国際競争を知る人たちであることで担保されます。
このことは別の報道からも推測されます。それは、元日産取締役でゴーン容疑者と共に逮捕されたケリー容疑者が雑誌上で述べた西川社長の社内規則違反の行為につき、その真偽を聴取する予定との報道です。その行為とは、西川社長が株価連動報酬制度の行使日を自分の有利になるよう変更した、自分の住居購入にあたり日産が肩代わりし、費用は分割で返済することを打診した、というものです。前半のことは、記録を調べれば明らかになることであり、白黒がつくと思われます。後半のことは書面が残っているとは思われず、また実行されていないことから立証は難しいと思われます。それでも前半のことが事実であれば、西川社長にはゴーン容疑者の逮捕理由となった有価証券報告書への報酬過少記載で過少分を後日払うと言う契約書にサインしていた事実も判明しており、社長失格とされることは想像に難くありません。即ち、ルノー・日産統合に向けた動きが既に始まっていることが伺われます。
日産およびルノーの生き残りのためには、両社の統合しか選択肢はなく、望ましい方向に動き出したと歓迎されます。
尚、それと同時に進められるべきことは、統合を阻止する目的でゴーンを逮捕させるという暴挙の見直しです。ゴーン容疑者の逮捕容疑である有価証券報告書虚偽記載については、ゴーン容疑者は実際に受け取った報酬を正しく記載しており、虚偽記載でないことは明らかです。本来貰うべきと考えていた報酬との差額を役員退任後に受け取れないかと考え、コンサル契約などを作成し、ゴーン容疑者および西川社長が署名していたようですが、取締役会は承認しておらず、会社に支払い義務は生じていません。従って、有価証券報告書に記載すべき報酬には該当しません。それに有価証券報告書虚偽記載は形式犯であり、ゴーン容疑者ほどの経営者を逮捕するような犯罪ではありません。特別背任罪に問われているサウジアラビアやオマーンの友人に日産の資金を流した件も、本来日産社内で調査し、そういう結論になれば、ゴーン容疑者に弁済を求め、応じなければ民事訴訟で解決すべき問題です。そしてゴーン容疑者に弁済資力がなければ刑事告訴という手順です。今回ゴーン容疑者逮捕になったのは、司法取引という新しい制度を活用する良い機会と考えた東京地検特捜部が日産の内紛を利用したからです。ゴーン容疑者はこの被害者です。従って、委員会制度設置会社移行後には、この一連の事件を新しい取締役で再調査し、本来の解決の道筋に戻して欲しいと思います。そして日産から告訴を取り下げ、民事による解決を図ってほしいと思います。ゴーン容疑者は長い時間がかかる無罪判決ではなく、免訴が相当です。